1998 Fiscal Year Annual Research Report
低温・低照度環境下で生育したイネの光合成の特性と律速因子の解明
Project/Area Number |
09660061
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
牧野 周 東北大学, 農学部, 助教授 (70181617)
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Keywords | イネ / 光合成 / 成長 / 窒素 / 低温 / 低照度 / ルビスコ / 冷害 |
Research Abstract |
北日本地域のイネの冷害は、低温のみならず必ず極端な日照不足を伴っている。この低温・低照度は植物の成長と光合成に大きな影響を与える環境要因である。しかし、その詳細についてはわかっていない。本年度では、イネを数週間、低温・低照度というsuboptimalな環境条件で育て、個葉レベルでの光合成特性について詳細に調べた。 個葉レベルでのポテンシャルの光合成能力は、低温・低照度条件で成育すると明らかに低下しており、その低下率はおおよそ葉の窒素含量の減少で説明されるものであった。しかし、低温・低照度で成育したイネについて成育条件と同じ条件で光合成を測定し、標準栽培のイネを同じ条件で測定した光合成速度と同一の葉身窒素含量あたりで比較すると、低温・低照度で成育したイネの方が明かに高かった。すなわち、このことは低温・低照度に対する個葉光合成の順化が明確に認められたこと意味した。また、ガス交換の解析結果より、この環境への積極的な順化は、ポテンシャルのRuBP再生産能が高まっていることに由来することが明かとなった。しかし、RuBP再生産系のカギタンパク質であるチトクロームf量やスクロースリン酸合成酵素活性およびその酵素の活性化割合には差が認められなかった。現在、この特性が、低温環境への順化によって誘導されるものであるか、低照度によるものなのか、あるいは低温・低照度の組み合わせによって初めて誘導されるものなのかを調べている。
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