1998 Fiscal Year Annual Research Report
高収性トウモロコシ品種・育成のための苞葉に基づく栄養生理学的解析
Project/Area Number |
09660065
|
Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
藤田 耕之輔 広島大学, 生物生産学部, 教授 (90002170)
|
Keywords | トウモロコシ / 苞葉 / 葉面積大 / ヘミセルロース / 構成糖 / ^<13>Cトレーサー / キシロース / アラビノース |
Research Abstract |
トウモロコシ・フリント種・純系を供試し、苞葉の葉面積の支配要因について、炭素代謝、特に糖代謝との関連で調査した。 包葉の葉面積の異なるプリント種・純系3系統(X-15,CM-80,CE-78)を画場で標準栽培し、包葉の先端部の抽出期に包葉を抽出部と未抽出部に分け、さらに未抽出部を細分した。これらの部位について、細胞質、細胞壁などの各画分の構成糖の組成を測定(ガスクロマトグラフ)した。さらに、同時期に雌穂葉より^^<13>13CO_2を同化させ、その後72時間に渉って、メタノールおよび細胞壁画分、特にヘミセルロース、セルロースの各構成糖へ^^<13>Cの取り込み状態を追跡(GCC-MSで各単糖類に分け、それぞれの^^<13>Ctom%を測定)した。同様の測定を絹糸抽出期の包葉の完全展開期にも行った。得られた結果は、下記の通りであった。 (1) 苞葉葉面積はX-15でCM-80の約5倍で最も大きく、CE-80はその中間だった。この差異は、一葉当たり葉面積の差異によっており、CM-80ではこれと葉数が共に小さく、葉面積拡大速度も最も小さかった。なお、光合成能には系統間差は認められなかった。(2)X-15で包葉葉面積が他系統より大きい主たる原因は、葉展開期間における細胞壁、特にヘミセルロースの増大が著しいためだった。なお、CM-80では葉の未抽出部、特に葉基部の未展開部位の細胞壁成分濃度が高く特徴的であり、これがこの系統で葉面積が小さい一因と推定される。(3)包葉のヘミセルロースの主たる構成糖は、キシロース、アラビノースおよびグルコースであり、特にヘミセルロースではキシロース濃度が細胞質より著しく高かった。(4)^^<13>Cの取り込み速度は葉面積拡大速度と関連し、その速度が高いX-15では^^<13>CO_2同化後24時間目にヘミセルロースで^^<13>Catom%が急上昇した。(5)展開中の葉について見ると、^^<13>C取り込み速度はヘミセルロースのキシロースで高く、グルコースでもほぼ同等の値を示した。一方、細胞質ではキシロース濃度が低く、その^^<13>Catom%も低く同化72時間目に上昇し、ヘミセルロースのそれにほぼ匹敵した。一方、完全展開葉では、逆にキシロースの^^<13>Catom%はヘミセルロース画分で低く、細胞質で高かった。 以上の結果を総合すると、包葉面積はヘミセルロースの合成と関連し、それはキシロースの合成能によって支配されると推察される。
|