1998 Fiscal Year Annual Research Report
てんかん症の遺伝的素因と発作を誘発する外部刺激との相互作用の分子的基礎の解析
Project/Area Number |
09660078
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中野 紀和男 名古屋大学, 生物分子応答研究センター, 助教授 (10023433)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
湯浅 茂樹 千葉大学, 医学部, 教授 (70127596)
鬼頭 純三 名古屋大学, 医学部, 教授 (60022802)
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Keywords | てんかん / ELマウス / キノリン酸 / 神経毒 / c-fos / 初期遺伝子 / チロシンヒドロキシラーゼ / 前庭刺激 |
Research Abstract |
ELマウスは「放り挙げ」などの体位変換刺激を繰り返すことによって発病することが知られている。しかしこの外部刺激の意義、ことにそれと遺伝的素因との関連は全く不明だった。我々はこれまで、ELマウスをモデルにし、てんかん原因遺伝子の検索を行ってきた。その結果、まず当マウスの脳では、キノリン酸の合成が異常に高いことを突き止めた。そこで次に、当遺伝子の発現を調べたところ、対照マウスに比べ明らかに高かった。そこで本研究では、当遺伝子の発現に対する「放り挙げ」刺激の意義を検討した。その結果同マウスに、週一度、30回の「放り挙げ刺激を与えると、脳の本酵素の活性がさらに増大することを突き止めた。しかも同じELマウスでも、放り挙げ」を繰り返してもまだけいれん発作を起こすに至らない個体は、本遺伝子の発現が低いことも明らかにした。これらの事実は、脳のキノリン酸合成の異常がELマウスのてんかんの原因であることを強く示唆とともに、経験的に知られていた「放り挙げ」刺激の意味を知る重要なきっかけが得られたことを示す。そこでさらに、脳の他の遺伝子の発現についても調べた。その結果、転写調節蛋白質である、c-fos(Fos)の発現も「放り挙げ」刺激により明らかに誘導された。対照のddYマウスではこのような現象は全く見られなかった。他のチロシンヒドロキシラーゼ、神経成長因子、インドールアミンオキシゲナーゼなどの遺伝子の発現には変化が見られなかった。これらの結果は、ELマウスは「放り挙げ」などの体位変換刺激にたいする脳の応答性に異常があることを示す。そしてキノリン酸合成の亢進がけいれん誘発の直接の原因であるとしても、ELマウスのてんかんの遺伝的素因は、まさにこの体位変換刺激にたいする脳の応答性の異常にあり、その結果キノリン酸合成の亢進が引き起こされたと判断される。
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Research Products
(1 results)