1998 Fiscal Year Annual Research Report
デハロゲナーゼによる有機ハロゲン物質分解機構に関する蛋白工学的構造研究
Project/Area Number |
09660088
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
畑 安雄 京都大学, 化学研究所, 助教授 (10127277)
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Keywords | デハロゲナーゼ / X線結晶解析 / 反応中間体 / 変異酵素 / 四次元構造 / 脱ハロゲン化 / SN2反応 |
Research Abstract |
地球環境汚染物質の有機ハロゲン化合物を分解する酵素であるPseudononassp.YL由来L-2-ハロ酸デハロゲナーゼの基質分解機構を原子レベルで明らかにするために、タンパク質工学的手法を用いて構造と機能の関係についで研究を行ってきた。まず野生型酵素の構造を2.0A分解能で解析し、二量体分子の各サブユニットが求核残基Asp10や活性残基の殆どを含んだα/β構造のコア・ドメインと二量体形成に関与する4本の逆平行aヘリックス構造のサブ・ドメインからなり、ドメイン間に分子表面から活性部へ繋がる溝が存在することを明らかにした。次に反応過程で形成される複合体の立体構造決定を行った。Serl75をAlaに置換したS175A変異体の結晶を調製し、分子間架橋を施した後に基質を含む沈殿剤溶液に漬けて複合体結晶とし、2人分解能でX線結晶構造解析した処、ASpl0が基質のC2-炭素を求核攻撃してできたエステル中間体の構造を明らかにすることができた。エステル中間体では、Asp10-Thrl4の領域が活性部の方へ移動し、求核残基Asp10の側鎖カルボキシル基が回転するようにコンホメーション変化して基質のC2-炭素と共有結合している。基質のカルボキシル基は、Serl18の側鎖ヒドロキシル基やAsnl19の主鎖アミノ基との水素結合で安定化されている。基質のアルキル基は、Tyr14、Leu45、Phe60、Lys151やTrp179で構成される疎水チャネルに挿入され、疎水的相互作用で安定化されている。また、基質は塩素が脱離してD-異性体になり、Serl75のヒドロキシル基近傍の空間にエステル加水分解に関与すると思われる氷分子が新たに見つかった。更にL-2-ハロアミドを基質にすると、基質由来の塩素イオンと考えられる電子密度ピークがArg41の側鎖グアニジノ基の先に現われた。このことはArg41がハロゲン原子の引き抜きに関与していることを大きく示唆している。今後、更に酵素-基質複合体及び酵素-生成物複合体の結晶解析を遂行する。
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[Publications] 畑 安雄: "L-2-ハロ酸脱ハロゲン化酵素の立体構造と反応機構の解析" 日本結晶学会誌. 39. 358-365 (1997)
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[Publications] Yong-Fu Li: "Crystal Structures of Reaction Intermediates of L-2-Haloacid Dehalogenase and Implications for the Reaction Mechanism" The Journal of Biological Chemistry. 273,24. 15035-15044 (1998)
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[Publications] Yong-Fu Li: "X-Ray Structure of a Reaction Intermediate of L-2-Haloacid Dehalogenase with L-2-Chloropropionamide" Journal of Biochemistry. 124. 20-22 (1998)
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[Publications] 藤井知実: "脱ハロゲン化酵素の疑似四次元構造による反応機構解析" バイオサイエンスとインダストリー. 57,1. 37-38 (1999)