1998 Fiscal Year Annual Research Report
膜傷害活性を有する新規なレクチンの構造と機能に関する研究
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09660097
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
山崎 信行 九州大学, 農学部, 教授 (70036383)
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Keywords | 海産無脊椎動物 / レクチン / 膜傷害活性 / イオン透過性小孔形成 / 赤血球膜モデル / 人工脂質膜 / 会合体形成 / 高次構造変化 |
Research Abstract |
本研究は、海産無脊椎動物グミから単離した溶血活性を有するレクチンCEL-IIIを対象にして、構造と活性発現機構を解明しようとしたものである。平成10年度においては、まず、CEL-IIIのプロテアーゼによる限定分解について検討し、その結果、CEL-IIIのパパイン消化物から、分子量16,000の活性フラグメントP16を得ることに成功した。活性フラグメントPl6は、CEL-III分子のN-末端領域に由来する154アミノ酸残基よりなるペプチド断片であり、糖結合能を有していることが判明した。さらに、活性フラグメントPl6は、CEL-IIIの構造を解析するうえでも有効であり、これにより、これまでに構造未決定であったN-末端領域の80%以上のアミノ酸配列を明らかにすることができた。一方、CEL-IIIによる溶血機構を究明するために最適な人工脂質膜を構築し、これらを用いてCEL-IIIによる膜傷害の機構を解析した。螢光色素を包含した人工リポソームを調製して、CEL-IIIとの相互作用により螢光色素の漏出活性について検討し、その結果、脂質膜の傷害は、CEL-IIIに特異的な糖鎖を有する脂質膜で顕著なことが明らかとなった。また、脂質二重膜にとり込まれると、CEL-IIIは会合して7量体を形成し、これに伴ってCEL-III分子の高次構造は大きく変化してβ-シート構造領域が増加することを認めた。さらに、パッチ・クランプ法による解析結果から、CEL-IIIは脂質膜に対してイオン透過性のイオンチャンネルを形成することも明らかにした。これらのモデル実験とこれまでに得た研究成果から、CEL-IIIによる膜傷害は、まず赤血球のような動物細胞膜の表面にある糖鎖レセプターに結合した後に形成されるCEL-IIIの7量体か、脂質膜と強い相互作用をして小孔を形成することによるものと結論した。
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[Publications] Hatakeyama,T.,Matsuyama,Y.,Funada,T.,Fukuyama,S.,Kuwahara,H.,Aoyagi,H., and Yamasaki,N.: "Chemical Modification of the Hemolytic Lection CEL-III by Succinic Anhydrive: Involvement of Amino Groups in the Oligomerization Process." Bioscience Biotechnology and Biochemistry. 62・6. 1185-1189 (1998)
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[Publications] Sallay,I.,Hatakeyama,T., and Yamasaki,N.: "Studies on the Carbohydrate Binding Sites of the Hemolytic Lectin CEL-III Isolated from the Marine Invertebrate Cucumaria echinata" Bioscience Biotechnology and Biochemistry. 62・9. 1757-1761 (1998)