Research Abstract |
茶の香気生成酵素β-プリメベロシダーゼのチャ葉中における分布と存在意義の総合的理解に向けての基礎を築くことを目指し,本研究ではβ-プリメベロシダーゼの簡易精製法確立のため,アフィニティークロマト用吸着体の調製に引き続き取り組んだ.前年度までの知見から,グリゴシダーゼの精製に用いられてきたアフィニティークロマト用吸着体のリガンド(チオグリコシド,グリコシルアミド)はことごとく,本研究には適するものではないことが判明した.そこでやむなく原点に立ち返って,リガンドのデザインを基本的に見直し,β-アミノ糖を利用した新規なグリコシダーゼ阻害剤の設計・合成に取り組んだ. グリコシダーゼ阻害剤の合成研究は数多くなされているが,糖の環外にN原子を導入したグリコシダーゼの反応機構に基づく阻害剤は例を見ない.そこで,まずすでに確立した方法により,グルコース,ガラクトース,キシロースの各β-アミノピラノシドを得て,methyl phenylthioacetimidate hydrobromideと反応させて各単糖の新規アミジン塩(1,2,3)を高収率(83-95%)で合成し合成した.これらの阻害剤は,対応するグリコシダーゼに対してK_i=9.4×10^<-8>,2.4×10^<-6>,2.5×10^<-6>と極めて強い阻害活性を示し,それらはいずれも拮抗型阻害であることが判った.しかも,いずれも他の酵素に対しては10^<-2>〜10^<-3>の阻害の低下を来たし,極めて選択性の高いものであることが判明した.二糖のモデルとしてマルトースを用いて同様に反応したところ,相当するβ-アミジン塩を得ることができた. 本研究では,当初既知のリガンドを用いてのアフィニティークロマト用吸着体の調製を計画したが,既報のものでは目的とする吸着体は得られず,計画は思わぬ障害と遭遇したが,原点に戻って新規阻害剤の設計からやり直し,思いがけなくも極めて阻害活性が強く,しかも選択性の高い新規グリコシダーゼ阻害剤を発見することができた.本合成法は糖の水酸基を一切保護せずに合成を行っており,簡便で汎用性の高い合成法であり,目的とするアフィニティークロマト用吸着体ばかりでなく、選択性の高い吸着体の設計の可能性も考えられ,グリコシダーゼ研究に新しい局面を開くことになったことは予定外ではあるが,本研究の素晴らしい成果である.
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