1997 Fiscal Year Annual Research Report
β-ラクトグロブリンの経口寛容誘導活性に及ぼすアミノカルボニル反応の影響
Project/Area Number |
09660130
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
榎本 淳 群馬大学, 工学部, 助教授 (70183217)
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Keywords | 経口寛容 / 食品アレルギー / β-ラクトグロブリン / 抗体 / T細胞 / 牛乳 / 加熱 / アミノカルボニル反応 |
Research Abstract |
未加熱乳と比較して加熱乳を我々が摂取した場合、牛乳アレルギーの発症頻度が高くなるといわれている。本研究ではその理由を解明することを目的として、生体が本来兼ね備え、食品アレルギーの有力な発症防止機構の一つに挙げられている経口寛容現象が、加熱乳の経口投与によりどのように変化するのか検討した。まず最初に、主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロブリン(β-Lg)に対して高応答性の系統であるC3H/HeNマウス(1群6匹)にあらかじめ生脱脂乳(β-Lgの遺伝変異体Aのみを含む個乳)を1匹当たり約3ml/日の割合で1〜4週間与えた後、常法に従ってβ-Lgをアジュバントと共に免疫し、その際誘起される抗原特異的な抗体応答ならびにT細胞応答をそれぞれ酵素免疫測定法およびT細胞増殖試験を用いて評価した。その結果、生脱脂乳を1週間以上マウスに摂取させることにより、β-Lgに対する抗体応答およびT細胞応答とも、生脱脂乳未投与群の約10%以下にまで大きく低下することが明らかとなった。すなわち、牛乳アレルゲンを高濃度かつ単独で器具を用いて強制的に投与した従来の方法ではなく、牛乳をマウスに自由摂取させた場合でも、牛乳アレルゲンに対する経口寛容が強く誘導されることが示された。次に、2種類の加熱脱脂乳(80℃,30分間および80℃,3時間加熱)をそれぞれマウスに1週間与え、生脱脂乳投与群と比較したところ、抗体応答ならびにT細胞応答とも、その抑制の程度が加熱の強度に応じて有意に小さくなることが認められた。すなわち、牛乳を加熱することにより、それが本来有するβ-Lgに特異的な経口寛容誘導活性が低下することが明らかとなった。このような低下は牛乳加熱時に生じるβ-Lgの変化によるものであると考えられるが、特にβ-Lgと乳糖の相互作用であるアミノカルボニル反応に注目して、その経口寛容誘導活性に及ぼす影響を体系的かつ詳細に来年度検討する予定である。
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