1998 Fiscal Year Annual Research Report
β-ラクトグロブリンの経口寛容誘導活性に及ぼすアミノカルボニル反応の影響
Project/Area Number |
09660130
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
榎本 淳 群馬大学, 工学部, 助教授 (70183217)
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Keywords | 経口寛容 / 食品アレルギー / β-ラクトグロブリン / 抗体 / T細胞 / 牛乳 / 加熱 / アミノカルボニル反応 |
Research Abstract |
生乳と比較して加熱乳を我々が摂取した場合、牛乳アレルギーの発症頻度が高くなるといわれている。本研究ではその理由の解明を目指して、食品アレルギーの有力な発症防止機構の一つに挙げられている経口寛容現象が、加熱乳の投与によりどのように変化するのか検討した。まず最初に、主要な牛乳アレルゲンであるβ-ラクトグロプリン(β-Lg)は対して高応答性の系統であるC3H/HeNマウスにあらかじめ生脱脂乳(β-Lgの遺伝変異体Aのみを含む個乳)を約3ml/日/匹の割合で2〜62日間自由摂取させた後、常法に従ってアジュバントと共にβ-Lgにて免疫し、その際誘導される特異抗体応答を酵素免疫測定法を用いて、特異T細胞応答をT細胞増殖試験にてそれぞれ評価した。その結果、生乳を8日間以上マウスに摂取させた場合、β-Lgに対する抗体応答およびT細胞応答は未摂取群の1/10程度に大きく低下することが明らかとなった。すなわち、牛乳アレルゲンを高濃度かつ単独で器具を用いて強制的に投与した従来の方法ではなく、牛乳をマウスに自由摂取させた場合でも、牛乳アレルゲンに対する経口寛容が強く誘導されることが示された。しかし、あらかじめ60〜90℃にて10〜300分間加熱処理を施した加熱乳を与えたところ、その加熱温度や時間の増大に伴い、両応答とも抑制されにくくなることが示された。この傾向は加熱乳を長期間(62日間)摂取させた場合、特に顕著であった。さらに、β-Lg単独あるいはβ-Lg・乳糖混合溶液を未加熱あるいは加熱(80℃、180分間)後マウスに与えたところ、褐変反応が認められたβ-Lg・乳糖加熱溶液投与群では、β-Lg対する免疫応答の抑制の有意な低下が観察された。これらの結果より、牛乳の加熱によりβ-Lgが乳糖とアミノカルボニル反応を起こすと、β-Lgの経口寛容誘導活性が低下するものと結論づけられ、この現象が牛乳アレルギーの発症に関与している可能性が示唆された。
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Research Products
(1 results)