1998 Fiscal Year Annual Research Report
摂食行動異常モデルラットを用いた新規食欲調節因子の検索
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09660132
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日高 智美 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教授 (60212164)
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Keywords | レプチン / 食欲調節 / リノール酸 / 遊離脂肪酸 / 表面ブラズモンバイオセンサー |
Research Abstract |
肥満遺伝子遺伝子産物(レプチン)は脂肪組織から分泌され視床下部にある受容体に結合し食欲を抑制する。その作用は視床下部において種々の食欲調節因子の分泌、発現を変化させることにより発揮されると推定されているが、レプチン受容体以降の経路は未解明である。本研究では食欲調節の機構を分子レベルで解明することを目標とし、今年度はレプチンの作用を修飾する新しい因子の検索を生体分子間相互作用解析装置(表面プラズモン共鳴センサー)を用いて行った。 上記バイオセンサー(BIAcore)のセンサーチップにマウス組み替えレプチンを固定し、微生物培養液約300種についてレプチンと相互作用する物質の検索を行った。その結果、3菌株が活性を示したので、最も活性の強い1菌株(真菌、Chaetomium sp.)について活性物質の単離、構造決定を行った。その結果、本物質はリノール酸であることが明かとなった。そこで、各種脂肪酸についてレプチンとの相互作用を同様の系で検討したところ、オレイン酸、リノール酸では活性が認められ(有効濃度0.2mM以上)、ステアリン酸、リノール酸メチルでは活性が認められなかった。また、リノール酸によりレプチンとレプチン受容体との結合が阻害されることも明かとなった。 レプチンは血中では結合タンパク質と会合しているという報告もある。また肥満者では血中レプチン濃度が高いにもかかわらずレプチンの効果が低いというレプチン耐性が問題となっており、これに結合タンパク質が関与するのではないかという推察もなされている。オレイン酸やリノール酸などの血液中に通常存在する脂肪酸とレプチンとの相互作用が、血液中で実際に観察されるかどうかは不明であるが、高脂肪酸食摂取によるレプチン耐性や脂肪酸自体の食欲調節作用なども報告されていることから、今回見出された相互作用は極めて興味深い。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Takehiko Morishita: "Leptin changes Ca^<2+>/calmodulin-dependent response and up-regulates the gene expression of calcineulin in rat hypothalamus." Life Sciences. 63(20). PL311-315 (1998)
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[Publications] 森下猛彦: "レプチン研究の新しい可能性-レプチンはカルシウム/カルモデュリン応答を変化させるか?" バイオサイエンスとバイオインダストリー. 56(9). 619-620 (1998)