1997 Fiscal Year Annual Research Report
二次胆汁酸の発癌プロモーター作用と胆汁酸捕捉性食餌による大腸癌発生抑制
Project/Area Number |
09660142
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
岩見 公和 京都府立大学, 農学部, 教授 (00026569)
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Keywords | 空回腸部分切除 / 二次胆汁酸 / 実験的大腸発癌 / 大豆レジスタントプロテイン / 発癌プロモーター作用 |
Research Abstract |
二次胆汁酸の発癌プロモーター作用の解析 胆汁酸結合能を有する大豆タンパク質末梢化高分子画分(大豆レジスタントプロテイン)の投与は、胆汁酸およびコレステロールの糞中排泄を高め、血清コレステロール値上昇抑制をもたすと共に実験的大腸腫瘍(癌)の発生頻度を軽減する。一方アゾキシメタン処理したラットを二次胆汁酸(0.2%デオキシコール酸)添加飼料で飼育を続けると大腸腫瘍(癌)の多発がみられる。そこで二次胆汁酸の発癌プロモーター作用を検討するため、空腸と回腸に部分切除手術を施し、実験的大腸癌発生に対する影響を調べた。飼育期間中、尾静脈より採血して血中コレステロール及び胆汁酸濃度の測定を、所定の期間飼育終了前数日間の糞を採取して中性および酸性ステロイドの糞中排泄量の測定を行った。39週目、全ラットを屠殺して大腸を摘出し、肉眼的に認められる悪性腫瘍に限定して両手術群間の腫瘍発生率、腫瘍数および腫瘍サイズ(直径)を比較した。飼料摂取量や術後の体重増加に両群間で有意な差はなく、コレステロールと胆汁酸の血中濃度は空腸切除群で高く、糞中酸性ステロイド排泄量は回腸切除群で高いことが確かめられた。腫瘍発生率(90%vs.67%)や腫瘍サイズ(7.6mm vs.6.2mm)には回腸切除群にやや高い傾向があるものの有意とは認められなかった。しかし、発生腫瘍数(n=12;回腸切除群40個、空腸切除群19個)をラット個々の坦腫瘍数分布についてMann-Whitney U-検定を行うとP<0.05と求められ、小腸切除部位の異なる2群間の腫瘍発生数の順序関係には有意な差違のあることが明らかとなった。このことは、回腸に局在するNa^+依存性胆汁酸トランスポーターの除去または機能低下によって腸腔内二次胆汁酸濃度が増加し、大腸腫瘍(癌)誘発の危険が高まることを示唆する。なお大豆レジスタントプロテイン摂取による大腸腫瘍の軽減効果については、腫瘍異形化の過程を時間的要因も考慮に入れて評価すべく、ファイバースコープ(ヒト気管支用;オリンパスBF-3C30)による観察を続けている。
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