1997 Fiscal Year Annual Research Report
最終氷期以降の西日本におけるスギの変遷に関する研究
Project/Area Number |
09660170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
高原 光 京都府立大学, 農学部, 助教授 (30216775)
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Keywords | スギ / 花粉分析 / 炭素片分析 / 植生変遷 / 後氷期 / 最終氷期 / 中国地方 / 近畿地方 |
Research Abstract |
平成9年度は,島根県沼原において堆積物を採取し,さらに,これまでに採取している蛇ケ乢湿原および赤名湿原の堆積物の分析を行った。その結果は,下記のとおりである。 1.島根県沼原 島根県鹿足群津和野町の沼原において,深度10.75mの堆積物を採取した。この堆積物の最下層から深度7m付近までは,砂,有機質粘土の互層,7mより上部は,泥炭の有機質粘土の互層であり,花粉分析として良好なものであった。 この堆積物の放射性炭素年代測定の結果は,深度1.3mで3320±60年前(Beta-113649),3.6mで9170±80年前(Beta-113650),3.7mで13440±80年前(Beta-113651)であった。この結果から,沼原の堆積物は最終氷期最盛期から現在までの,植生や気候変動を記録していることが明らかになった。平成10年度には,この堆積物の花粉分析を進める予定である。 2.蛇ケ乢湿原 岡山県真庭郡川上町の蛇ケ乢湿原の花粉分析結果から約6000年前以降のこの地域における植生変遷をまとめて花粉学会誌に投稿した。ここでは,冷温帯落葉広葉樹林から照葉樹林へ森林が変遷した。スギは約4500年前からやや増加したが,優勢になることはなかった。 3.赤名湿原 島根県飯石郡赤来町の赤名湿原の花粉分析を行った。その結果,約8000年前にはクリ,コナラ亜属の優勢な森林が発達していた。それ以降から約2000年前までは,おそらく堆積物が欠如している。また,炭素片が約2m堆積しており,森林火災など人的影響が考えられた。2000年前以降はマツ属,コナラ亜属などが増加し,二次林化が進んだ。
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