1997 Fiscal Year Annual Research Report
魚類耳石の酸素同位体比による回遊履歴の解明-二次イオン質量分析法(SIMS)の魚類耳石への応用-
Project/Area Number |
09660194
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
大竹 二雄 三重大学, 生物資源学部, 助教授 (20160525)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
比屋根 肇 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (70192292)
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Keywords | 魚類 / 耳石 / 酸素同位体比 / Sr:Ca比 / 回遊履歴 |
Research Abstract |
本研究の目的は魚類耳石の酸素同位体比やSr:Ca比などの微量元素特性から個体の生息水温の履歴を推定し、さらにその回遊履歴を解明することにある。本年度はシラスウナギの耳石を用いて耳石の微小領域酸素同位体比測定法の確立を計った。また耳石Sr:Ca比については、水温をコントロールした環境下で飼育したマイワシの耳石を用いて、EPMA法(電子線束X線微量元素測定法)で測定したSr:Ca比と水温との関係式を求め、この関係から天然個体の水温履歴の推定を試みた。【酸素同位体比測定法の確立】二次イオン質量分析法(SIMS)による微小領域酸素同位体測定を試みた。種子島海岸で採集されたシラスウナギの耳石を分析に供した。耳石は樹脂に包埋後、研磨して中心面を表出し、金を200Åの厚さでコーティングした。分析にはCAMECAims-6f型二次イオン質量分析装置を用いた。耳石の酸素同位体比(^<18>O/^<16>O)は中心部分で高く、その周辺および縁辺部で低い傾向が得られた。このことは耳石中心部にあたる時期、すなわち産卵水温がその後の発育期の生息水温とは異なることを示唆する。しかし、分析結果を詳細に検討すると、分析時のチャージアップや試料表面の微細な凹凸などが分析値に大きな影響を与えることが明らかとなった。現在引き続いて、より信頼性の高い分析結果を得るべく、チャージアップを抑えるための適正なコーティングの厚さや一次ビーム径、あるいは試料平面の研磨方法などについて検討中である。【耳石Sr:Ca比と生息水温との関係】飼育実験からマイワシの耳石Sr:Ca比と水温との関係式を求めると、y=-0.057x+3.12(y:Sr:Ca比 x:水温)となった。この関係式を用いて伊勢湾や三陸沖で採集された個体の水温履歴を推定すると、マイワシの生息水温として考えられているものを逸脱する結果も得られた。この原因として飼育のストレスが与えるSr:Ca比への影響が考えられた。現在、より精度の高い関係式を求めるべく飼育方法などを検討している。
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[Publications] Otake, T.and Hiyagon H.: "Estimation of spawning temperature of Japanese eel by oxygen isotopic composition" Marine Ecology Progress Series. (発表予定).
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[Publications] Otake, T. and Watanabe, Y.: "Migration history of Japanese sardine estimated by otolith Sr:Ca ratios" Marine Biology. (発表予定).