1998 Fiscal Year Annual Research Report
ケンサキイカの二型(ケンサキイカ型とブドウイカ型)の集団遺伝学的研究
Project/Area Number |
09660206
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
夏苅 豊 長崎大学, 水産学部, 教授 (10039729)
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Keywords | ケンサキイカ / ブドウイカ / 系統群 / 形態変異 / 季節型 / アイソザイム / 頭足類 / ヤリイカ科 |
Research Abstract |
本年度は二ケ年継続の第二年度である。昨年度のアイソザイムの検索の結果を踏まえて、本年度は、ケンサキイカの二型、春夏の高水温期に漁獲される体の細いもの(ケンサキイカ型)と秋冬の低水温期に漁獲される体の太いもの(ブドウイカ型)、のアイソザイム分析を行った。 分析対象とした標本は、東シナ海中央部で底引き網で漁獲された、ケンサキイカ型1群(85個体)とブドウイカ型2群(153個体、113個体)の3標本群である。 まず、3標本群がハーディ・ワインバーグ平衡にあるものとして、各遺伝子座の対立遺伝子の観測値から期待値を求め、この両者の異同を検定したところ、両者に有意な差はなかった。このことから、3標本群はハーディ・ワインバーグ平衡にあるメンデル集団から抽出されたと解釈される。変異は各標本群ごとに、3〜5遺伝子座で認められた。各標本群における変異のあった遺伝子座の割合は、30%〜50%であったが、一般的に多型とよばれている、最大対立遺伝子頻度が0.95以下の遺伝子座は、ブドウイカ型の1群の1遺伝子座(AK-2^*)のみであった。3標本群ごとの平均ヘテロ接合体率において、遺伝子頻度から求めた期待値と観察値の間には大きな差はみられず、ホモ過剰・ヘテロ過剰の傾向もみられなかった。これらのことから、ケンサキイカの遺伝的変異性は低いと思われる。3標本群間にどれほどの分化があるかについて、Neiの遺伝子距離Dを求めて比較した。得られた三つのD値は何れも10^<-4>レベルの極めて小さい値であった。以上のことからケンサキイカの二型は遺伝的にほぼ均一な一つの繁殖集団を形成していると考えられる。
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Research Products
(1 results)