1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09660218
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
佐藤 実 東北大学, 農学部, 助教授 (70050680)
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Keywords | 神経興奮性アミノ酸 / ドウモイ酸 / N-メチル-D-アスパラギン酸 / カイニン酸 / NMDA / 分布 / 海藻 / 海産動物 |
Research Abstract |
N-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)、カイニン酸(KA)およびドウモイ酸(DA)の3種のアミノ酸はこれまでの研究により、高等動物において神経興奮作用を示すとともに、高濃度では神経組織の破壊をもたらすなど神経毒アミノ酸として知られている。このうちKAとDAは海藻に含まれ、駆虫剤として利用されている。またNMDAは寿司、刺身などで食卓に上がるアカガイに含まれている。さらにDAはカナダでイガイを食したヒトが記憶喪失性の中毒になった原因物質であり、これらの神経興奮性アミノ酸の分布を明らかにすることは食品衛生上重要と考える。本年度は三陸沿岸の各種水産動物、海藻類について3種の神経興奮性アミノ酸の分布を調べた。定量法は昨年までと同様にフェニルイソチオシアネートでPTC-誘導体化したのち、逆相ODSカラムで分離定量する方法で行った。海藻のKAおよびDAについては、昨年度の南西諸島海藻の分析で分布が確認された紅藻フジマツモ科に属する海藻でも、三陸沿岸海藻にはKAおよびDAとも検出されなかった。またNMDAは南西諸島海藻と同様にいずれの海藻にも検出されなかった。従って、KAおよびDAは南西諸島に分布する紅藻フジマツモ科の海藻のみに分布する極めて分布が限定されていることが明らかになった。 神経興奮性アミノ酸3種の生合成系路の解明を目的に、本年度はNMDAが天然物で初めて単離された軟体動物アカガイを用いて、放射性標識化合物を用いるトレーサー実験を行った。標識化合物にはNMDAの基本構造を構成する1-14C-D-アスパラギン酸を用いた。アカガイ筋肉部に370kBqの1-14C-D-アスパラギン酸を注射した後15℃海水に戻し、経時的に採取しエキスを調製した。エキスをDowexl酢酸型カラムにて分画し酸性画分を得た。酸性画分をPTC誘導体に導いた後、TSK-ODS80Tカラムを装着したラジオHPLCに付し、NMDAへの放射能の取り込みの有無を調べた。今回、24時間までの分析ではD-アスパラギン酸からのNMDAへの生合成は確認することはできなかった。D-アスパラギン酸のN-メチル化によるNMDAの生合成経路は否定された。今後は、他のアミノ酸、有機酸などからの生合成経路を調べる必要がある。
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