1998 Fiscal Year Annual Research Report
反応場の異なる活性水素が高度不飽和脂質の自動酸化に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
09660225
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
大島 敏明 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (70134856)
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Keywords | 不飽和脂質 / 酸化 / リポソーム / 均質溶液 / ハイドロパーオキサイド / 異性体 / リン脂質 / ラジカル開始剤 |
Research Abstract |
1-Hexadecanoyl-2-[cis-9,12-octadecadienoyl]-sn-glycero-3-phosphocholine(PC 16:0/18:2)または1-hexadecanoyl-2-[(cis,cis,cis,cis)-5,8,11,14-eicosatetraenoyl]-sn-glycero-3-phosphocholine(PC 16:0/20:4)のリポソームおよびメタノール溶液中でアゾラジカル開始剤であるAAPHあるいはAMVNで酸化を促進した場合の、LOOH位置異性体の組成比を比較した。すなわち、上述のリン脂質12.5mgの薄膜を50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.4)1.5mlに水和したのち、超音波処理によりSUVを調製した。これに、4mM AAPHを含む同緩衝液1.5mlをさらに加え、再び超音波処理を施し25℃、暗所においてリポソーム系における酸化を行った。一方、上述のリン脂質12.5mgを2mM AMVNを含むメタノール3mlに溶解し、25℃、暗所において均質溶液系における酸化を行った。経時的に試料の一定量を取り出して、NaBH4による還元、酸化白金による接触還元、7%BF3メタノールによるメチルエステル化を行い、アラキドン酸LOOH由来のハイドロオキシ脂肪酸メチルエステルを得た。さらに、ハイドロオキシ基をTMS誘導体としてGC/MSによりLOOHの位置異性体組成を求めた。 過酸化物価(PV)が138meq/kgまでのメタノールなかにおけるPC 16:0/20:4のラジカル酸化では、5-hydroperoxy-(trans,cis,cis,cis)-6,8,11,14-eicosa-tetraenoic acid(5-LOOH)に対する15-hydroperoxy-(cis,cis,cis,trans)-5,8,11,13-eicosatetraenoic acid(15-LOOH)の割合(5-LOOH/15-LOOH)は0.6〜1.1、9-LOOH/11-LOOHは1.9〜2.2、5-LOOH/9-LOOHは0.4〜0.8、11-LOOH/15-LOOHは0.6〜1.0であった。このように、ターミナルハイドロパーオキサイドの生成割合はほぼ均衡していた。PC16:0/20:4のリポソームにおけるPV 76 meq/kgまでのラジカル酸化では、5-LOOH/15-LOOHは1.4〜2.0、9-LOOH/11-LOOHは2.3〜2.5、5-LOOH/9-LOOHは0.8〜1.5、11-LOOH/15-LOOHは0.5〜1.0であった。このように、5-LOOHは15-LOOHよりも生成されやすいことが判明した。PC16:0/18:2のラジカル酸化では、メタノール溶液中およびリポソームの何れにおいても13-LOOH/9-LOOHの割合は1.2〜1.3とほぼ等しかった。リポソームにおけるAAPHの分布状態を調べたところ、添加したAAPHのほぼ全量が水相に局在することを認めた。以上の結果から、メタノールのような均質溶液中ではPC16:0/20:4のアラキドン酸基とラジカル開始剤が均一に分布するために、7位と13位の炭素におけるビスアリル水素の引き抜きはほぼ均等に起こるものと考えた。一方、リポソームでは13位の炭素よりも界面に近く配位すると予測される7位の炭素に結合するビスアリル水素は、水相に局在するラジカル開始剤の影響をより強く受けて13位の炭素に結合するビスアリル水素よりも引き抜かれやすいものと考えた。
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