Research Abstract |
TDR法を用いて,様々なpHに調整した,モンモリロナイト,アロフェン,イモゴライト懸濁液の誘電緩和スペクトルを測定した。モンモリロナイト懸濁液については,3つの緩和が見出された。pHが小さくなるに伴い,最も低周波側に見出された緩和のピークはより低周波側に移動し,かつより大きくなった。アロフェン,イモゴライト懸濁液の誘電吸収スペクトルはモンモリロナイトのスペクトルとは大きく異なり,シリカアルミナゲルと類似した形状を示した。全ての懸濁液に共通して認められる20GHz近傍のピークは,自由水による緩和であると判断された。 モンモリロナイト懸濁液の低周波側の緩和は非常に大きく,また緩和時間も大きいので,結合水の配向による緩和とは認められなかった。pH値が小さくなる程,緩和時間と緩和強度が大きくなったので,モンモリロナイトの低周波側の緩和は拡散二重層の変化によるものであると結論づけられた。 モンモリロナイトの中周波側,アロフェンの中周波側,低周波側,イモゴライトの低周波側の緩和は,結合水の配向による緩和であると考えられた。結晶性粘土鉱物であるモンモリロナイトが,他の二つの非晶質鉱物と異なり,Cole-Cole型の緩和を示したことは興味深い。 モンモリロナイトにおいてはpH4と5が若干小さいが,pHによる変化は小さい。これは,モンモリロナイトのpH依存荷電が少なく,殆どの荷電が同像置換による永久荷電であるためであると考えられる。それに対して,アロフェンとイモゴライトと緩和強度はpHによって大きく異なった。アロフェンは,pH5近傍で最も小さく,酸性,アルカリ両側で大きくなった。イモゴライトは酸性側で大きく,アルカリ側になると小さくなった。これらの変化は粘土の分散凝集とうまく対応している。すなわち,モンモリロナイトは酸性側で,アロフェンはpH5ないし6で,イモゴライトはアルカリ側で凝集し,凝集するpHで緩和強度が小さくなった。
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