1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09660266
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Research Institution | Higashi Nippon International University |
Principal Investigator |
青木 辰司 東日本国際大学, 経済学部, 助教授 (50141073)
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Keywords | 景観条例 / 人間と自然の相互的作用関係 / 住民の景観評価 認識 / 専門家集団 |
Research Abstract |
今年度の研究においては、景観条例を施行している各市町村におけるヒヤリング及び、担当者の聞き取り等を通して、農村地域における景観評価の現状についての調査を行った。 近年各地で景観条例が施行されているが、大半の事例では行政側からの規制制度という正確が強く、各関係機関代表、住民代表、学識経験者等による景観条例策定委員会という「専門組織」による検討を経て議会に上程され、承認後施行運用される。 こうした「規制型景観条例」は、(1)罰則条項がない行政指導規則であること、(2)住民の景観認識との乖離が見られるという、制度及び現実上の問題を有している。 ところで、景観とは、人間と自然との相互的作用関係の表象であり、主体・人間の客体・自然に対する認知→作用行為の有り様に規定され、その有り様は、人間の生業・生活様式という文化的要因に基本的には規定される。 戦後の都市化の急速な展開によって、多くの農村景観は破壊や変容を遂げたが、経済成長の鈍化・停滞や複合不況が背景となり、成長神話の崩壊とともに、日本の原風景としての農村景観が社会的に再評価されてきている。 このような転換期における農村景観の中枢的課題は、社会的・行政的必要性と住民の生活様式の都市化の下での景観認識との乖離の克服にあるといえる。 その意味では、住民の景観評価の実態を踏まえながらも、専門家集団の影響力が重要と考えられ、継続的な専門家集団の関わりの有り様が問われている。特に私的所有権と公共性のせめぎ合いの中から、新たな共生空間をどのように創造するか、住民、行政、民間企業、そして専門家集団の関係性が課題として析出されている。
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