Research Abstract |
食肉の熟成中に,CaイオンによってZ線の無定形物質が分解されたり,タンパク質はカルパインやカテプシンなどのプロテアーゼによって分解される。ペプチドは更に小さなペプチド,アミノ酸にまで分解され,風味が改善され,食味も向上する。本実験では,と畜後2日目のホルスタイン種のもも肉(半腱様筋:M.Semitendinosus)を用い,試料を一般的な保存形態である肉塊(ブロック肉)試料と,30mMクエン酸リン酸緩衝液でホモジナイズしたホモジネート肉試料,更に筋原線維を取り除いた筋漿画分試料の3つを調製した。これらを低温(4℃)で貯蔵(28日間)した時,ぺプチド量やその成分がどのように変化するかについて検討した。 ペプチド量については,ブロック肉とホモジネート肉試料の加熱可溶性ぺプチド画分と2%TCA可溶性ペプチド画分は7日目まで急増し,14日目以降の増加は少し緩やかになった。しかしながら,筋漿画分試料は28日目まで一定の増加で,その値はブロック肉試料の値まで近づいた。 ホモジネート肉試料と筋漿画分試料の違いは筋原線維タンパク質の存在の有無であり,熟成中にこれらの間には差が生じ,28日目にはその差は加熱可溶性のぺプチドで約80mg,2%TCA可溶性ペプチドでは約90mgであった。このことは筋原線維タンパク質もプロテアーゼに対して感受性が高く,ペプチドとして可溶化することが推察された。 SDS-PAGEによる結果から,ブロック肉試料の加熱可溶性ペプチドは分子量4万程度のタンパク質や1.7万のミオグロビンも含まれていた。この内,熟成中に増加するのは,分子量4.0,2.3,1.4,1.07,0.8,0.7,0.55および0.45万の成分が認められた。しかし,筋漿画分から由来するぺプチドのバンドは2.3万以上の高分子のものは少なかった。また,ホモジネート肉試料では2.3,2.1,1.4,1.35および1.22万の成分が太く濃く現われた。2%TCA可溶性ペプチドはほとんどが0.8万以下の成分で,この外に0.7,0.55および0.45万の成分が主なものだった。 Superdex peptide HR10/30カラムを用いた加熱可溶性ペプチドの分析では,ピークはRT-38,42,67,72,78,84,41,100および110の10ヶが観察された。分子量の大きなRT-38,42および67,また,分子量の小さなRT-100は3種類の試料でいづれも増加した。しかし,RT-78,84はすべての試料で減少した。2%TCA可溶性ペプチドのピークは,RT-67,72,78,100および110であった。以上のことから,生成するペプチドは筋漿画分由来のものが大きな割合を占めていた。
|