1999 Fiscal Year Annual Research Report
化学物質誘発腎糸球体障害における細胞外基質の動態に関する研究
Project/Area Number |
09660346
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Research Institution | AZABU UNIVERCITY |
Principal Investigator |
代田 欣二 麻布大学, 生物科学総合研究所, 教授 (70147974)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
代田 眞理子 財団法人食品薬品安全センター, 秦野研究所, 研究員
藤瀬 浩 麻布大学, 獣医学部, 教授 (40106232)
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Keywords | 腎臓 / サイトカイン / 細胞外基質 |
Research Abstract |
6週齢、雄のSDラットの静脈内にジノスタチン・スチマラマー(ZS)(0.65mg/kg)を単回投与し、2週、5週、10週、15週、25週における腎糸球体でのIL-1beta、IL-6およびTGF-beta(3つのisoform)の動態を免疫組織化学及び分子生物学的手法により検索した。また、糸球体における細胞外基質(ECM)の増加はIV型コラーゲンを指標として観察し、メサンギウム細胞におけるα-smooth muscle actin(αSMA)の発現、増殖細胞マーカーであるPCNAや単球/マクロファージ系細胞とされるED-1陽性細胞の糸球体内浸潤についても観察した。 糸球体1個あたりのED-1陽性細胞数は観察全期間においてZS投与ラットで有意に多く。投与2週後で最も多かった。PCNA陽性細胞は主にメサンギウム細胞で、1糸球体あたりの浸潤細胞数はZS投与ラットで全期間有意に多かった。αSMAはZS投与ラットで5週後から糸球体に発現が認められた。IL-6陽性細胞は投与後10週で最も多くZSラットに認められた。TGF-beta1の陽性像は糸球体血管極に認められ、投与後2週で最高(平均15%)となりその後減少した。TGF-beta3の陽性像は糸球体上皮細胞と内皮細胞に認められ、投与後5週から上昇し(平均20%)、10週で最高となった(平均52%)。TGF-beta2は遠位尿細管及び集合管に認められ、Cr群で10週に発現のピークに達したのに対し、投与群では全期間を通じて変化がなかった。IV型コラーゲンはZS群で投与10〜15週以降に増加が認められた。なお、IL-1beta、IL-6の尿中排泄量は両群間に有意差を認めなかった。分離糸球体よりtotalRNAを抽出し、RT-PCRにより上記のサイトカインの遺伝子発現を検討した。IL-1beta、IL-6はZS群で投与後2,5週で認められた。TGF-beta1およびLTBP(Latent TGF-beta binding protein)の発現は両群において観察全期間に認められたが、両群間に遺伝子発現の差を見いだすには至らなかった。 以上より、本モデルにおいては、障害初期に糸球体に単球/マクロファージ系細胞が浸潤し、それら浸潤細胞及び糸球体細胞においてIL-beta、IL-6等の炎症生サイトカインの分泌、それに引き続きメサンギウム細胞の増殖、形質転換がおこり、ECM増加が誘導されると考えられた。また、今回免疫組織学的に認められたTGF-beta isoformsの発現及び局在のパターンは本モデルの特徴を示していると考えられた。
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