1997 Fiscal Year Annual Research Report
受容体欠損マウスを用いたダイオキシンの奇形誘発・毒性発現機序の個体レベルでの解析
Project/Area Number |
09670015
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山下 敬介 広島大学, 医学部, 助教授 (40166666)
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Keywords | ダイオキシン / 発生毒性 / 病的発生過程 / 口蓋裂 / 受容体 / 転写調節 / 遺伝子操作 / 受容体欠損 |
Research Abstract |
ダイオキシン(dioxins,正式の化学名のカナ表示はジオキシン)類の中で2,3,7,8四塩化ジベンゾパラジオキシン(2,3,7,8-Tetrachlorodibenzo-p-dioxin,以下TCDDと略)は極めて強い毒性を持つ化学物質として恐れられている。TCDDはマウス胎仔に口蓋裂と水腎症(腎盂拡大)を起こす。ダイオキシンの毒性は、ダイオキシン受容体であるアリル炭化水素受容体(Aryl hydrocarbon receptor以下AhRと略)を介して発現することが、さまざまな傍証から推測されてきた。今回、AhRの生体内での本来の役割及びダイオキシンによる毒性発現機構の解明のために、AhR欠損マウスが作製された。C57BL/6Jマウス(AhRあり)の雄・雌を交配し、妊娠12.5日(膣栓発見日=0日)にTCDDを40μg/kg体重の割合で1回強制経口投与した。妊娠18.5日のほぼすべての胎仔に口蓋裂と水腎症が見られた。一方、AhR欠損マウスを用いて同じ実験を行ったところ、口蓋裂と水腎症は全く誘発されなかった。この実験により、ダイオキシンによるマウス発生毒性はAhRを介して発現することが疑問の余地なく証明された。さらに、TCDDによる口蓋裂誘発のメカニズムを分子レベルで明らかにする目的で、上記と同様にTCDDを妊娠C57BL/6Jマウスに投与した。投与後の胎仔頭部の遺伝子発現の変動を非投与群の遺伝子発現と比較するため、RT-PCRによる分別ディスプレイ法を行い、発現の変化する遺伝子を同定した。これとは別に、成熟マウスで発現が増加することが知られている遺伝子が、TCDD投与後の胎仔で発現しているかどうかを調べた。発現増加が確認された遺伝子のうち、PAI-2(Plasminogen activator inhibitor-2)はTGF-β3の活性発現に関与しており、さらにTGF-β3欠損マウスにも口蓋裂が見られることから、TCDDによる口蓋裂誘発機構が次第に明らかになりつつある。
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[Publications] Junsei Mimura: "Loss of teratogenic response to 2,3,7,8-tetrachlorodibenzo-p-dioxin (TCDD) in mice lacking the Ah (dioxin)receptor." Genes to Cells. 2(10). 645-654 (1997)
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[Publications] 山下 年晴: "マウス胎児におけるTCDDによって発現が変化する遺伝子の解析" 第20回日本分子生物学会年会プログラム・講演要旨集. 389 (1997)