| Research Abstract |
性周期を厳しく同調させた母ラット96匹から,受精後9.5日胚〜20.5日胎仔までの試料を,細かな発生段階毎に得た.特に,上肢血管芽の形成開始から,主要部形成の完成までの間は,0.1日前後の細かい間隔で胚を得た.その得られた多数の胚について,各発生段階毎に,色素(Berlin blue)血管注入法と,樹脂注入鋳型法を施す標本とに分け,色素注入標本は,さらに,抗神経微細線維抗体で神経線維を染色して,動脈系の形成過程と,末梢神経系形成とを同時観察した.今年度は,このうち,色素注入-神経線維染色標本の解析を,上肢血管芽形成開始から鎖骨下動脈形成期までの間で,詳細に行い,従来の教科書や論文の記載とは全く異なる,以下の知見を得た.
従来,上肢動脈は第7節間動脈外側枝に由来するとされていた.しかし,本研究成果は,ラットの初期上肢動脈芽が,節間動脈とは全く関係のない,背側大動脈外側面に萌出する不定の非分節的な枝に由来すること,その枝が,後主静脈より腹側に位置すること,などを解明した.さらに,この動脈芽が上肢芽基部で縦吻合を行い,最初は下位の枝が太いが,徐々に上位の枝が太くなること,その枝の背側大動脈からの起始根は最初1本ずつであるが,蛸足状に数本ずつの根を持つようになり,次第にその根が各節間の位置に移動してゆくこと,その根のうち一本が節間動脈背側枝と吻合して,節間動脈外側枝に見えるようになり,次第に第7節間動脈と吻合したところが発達し,他の根や他の節間動脈と吻合したものが消失して,第7節間動脈外側枝に見えるようになったものが,最終的な鎖骨下動脈となることが判明した.腋窩動脈以遠の形成過程も,従来の成書と異なる結果が得られたが,その詳細な解析は,鋳型標本の解析等とともに,次年度以降の課題とした.この結果を,5th International Congress of the Vertebrate Morphology, In Bristol, UK, 1997にて展示発表し,その要旨はJ.Morphology : 232, 1997に掲載された.
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