Research Abstract |
性周期を厳しく同調させた母ラットへ96匹から,受精後9.5日胚〜20.5日胎仔を,0.5日以下の細かな発生段階別に得た.前肢血管芽形成開始が10.5日胚であること解明し,特に,受精後10日目から前肢主要動脈の枠組みが完成する13日目までの4日間は,0.1日前後の細かい間隔で胚を得た.得られた極めて多数の胚について,各発生段階毎に,色素血管注入法または樹脂注入鋳型法を施し,色素注入標本は,さらに,抗Neurofilament抗体で標識して神経線維を染色し,動脈系の形成過程と,末梢神経系形成とを同時観察して,両者の関係を解析した.昨年度は,このうち,色素注入-神経線維染色標本の解析を詳細に行い,従来の成書の記載とは全く異なる知見を得て,その結果を第5回国際脊椎動物形態学会(Bristol,1997)で発表し,その要旨はJ.Morpho1ogy:232,1997に掲載された.今年度は,その標本をさらに解析して,昨年度の結果である「ラット前肢初期動脈幹基部は節間動脈ではなく,別系統の非分節性動脈に由来する」に加えて,「前肢動脈幹の大部分も,第7節間ではなく第8節間付近に起始する非分節性初期動脈幹に由来する」「節間動脈と前肢初期動脈幹のとの吻合を通して,前肢領域の節間動脈起始部は消失するので,従来第7節間動脈由来とされた椎骨動脈の起始部さえ,前肢初期動脈幹に由来する」などの新知見を得たので,これらを統合して,12月にAnatomy and Embryology誌に投稿した.現在,この論文は,査読を終えて,若干の修正後の受理が編者により約束された.また,樹脂鋳型法に改良を加えて,新たに母ラット50匹の実験系を組み,再度,各発生段階毎に多数の寿型標本を得,さらに,組織化学染色による初期血管描出法の検討を開始した.現在,その実験・解解析・検討を継続中であり,次年度には成果を発表する予定である.
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