1997 Fiscal Year Annual Research Report
下垂体前葉各種ホルモン産生細胞における細胞内情報伝達機構に関する酵素組織細胞化学的研究
Project/Area Number |
09670024
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
屋代 隆 自治医科大学, 医学部, 講師 (80119859)
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Keywords | 下垂体前葉 / cAMP / adenylate cyclase / 酵素組織細胞化学 / GH-RH / PACAP / CRH |
Research Abstract |
下垂体前葉内には少なくとも5種類のホルモン産生細胞が存在し、全て視床下部の神経細胞から分泌され下垂体門脈で選ばれるstimulatory/inhibitory hormoneによって支配されている事は言うまでもない。最初に視床下部ホルモンとしてTRH、LH-RHが同定されたのは70年前後であるが、Sutherlandが提唱したadenylate cyclase systemの確立とあいまってcyclic AMP(cAMP)が視床下部ホルモンのsecond messengerであると理解されるようになった。adenylate cyclaseはATPからcAMPの生成反応を触媒するが、細胞内の上昇したcAMPはphosphodiesterase(PDE)により5'-AMPに分解され、最終的に5'-nucleotidaseにより加水分解をうける。これらの酵素は酵素組織・細胞化学的に膵臓、唾液腺、その他の臓器を対象として勢力的な検討がなされてきた。しかしながら、生化学的には数多く研究・論議されてきた下垂体前葉におけるadenylate cyclase systeemに関する形態学的研究がほとんどなされていない。 著者はこの数年は酵素組織・細胞化学の下垂体形態学への導入を試みている。まず成熟雄ラットの下垂体前葉を材料にして、Saito and Keino(1975)のmediumでadenylate cyclaseを、Takizawa and Saito(1992)でPDE、Wachstein and Meisei(1957)で5'-nucleotidaseの検出を試みた。その結果、三つの酵素のなかで5'-nucleotidaseがすべてのGH細胞と一部のgonadotrophの細胞膜上に検出された。また、固定条件等の改善にもかかわらずadenylate cyclaseは、反応産物が一部のGH細胞の細胞膜上に非常に弱く観察されるのみであり、gonadotrophsやACTH細胞等の他の細胞では陰性であった。初年度のおける研究はadenylate cyclase活性の検出である。上記のように通常の方法では検出が難しい為にactivationをかける反応を試みた。ラットの下垂体を1.5%のグルタルアルデヒドで環流固定後、40μmの凍結切片を作成した。その後、Saito and Keino(1975)の反応液中にadenylate cyclaseに対するactivatorを添加するのである。activatorにはcAMPの上昇が確認されているPACAP,GH-RH,CRHを10^<-6>から10^<-12>Mの濃度で反応液中に加えた。activatorを添加し酵素組織・細胞化学でその検出を試みることは細胞の機能の変化を判定することとなり大変独創的な研究である。その結果,GH-RH添加群では10^<-6>、10^<-7>Mの濃度で、GH細胞と思われる細胞の細胞膜上の反応が強くなり、同時に反応を示す細胞の数が上昇する傾向が見られた。現在、PACAP、CRHで検討中である。
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