1997 Fiscal Year Annual Research Report
病的心肥大とスポーツ性心肥大の発生機序及び分子生物学的特徴を含む諸性質の比較検討
Project/Area Number |
09670067
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
宮崎 均 筑波大学, 応用生物化学系, 助教授 (40183636)
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Keywords | レニン・アンジオテンシン系 / 心肥大 / スポーツ / 運動負荷 / 遺伝子 |
Research Abstract |
本研究の最終目標は、心機能を生理学的観点からだけでなく、遺伝子の発現パターンなど分子生物学的観点からも理解し、これを元に病的心肥大をスポーツにより改善して行くことにある。本研究ではその基盤を築くため、以下の3点を目的とした。(1)病的心肥大の発症に深く関わるレニン・アンジオテンシン系(RA系)がスポーツ性心肥大の発症にも関与するかを明らかにする。(2)心機能と関わりの深い心構成因子の遺伝子発現の質的・量的変動を両タイプの心肥大で比較する。(3)高血圧モデルラットに大小の運動負荷を与え、心肥大進展への影響を、生理学的所見と(2)の諸因子の遺伝子発現変化を指標に評価し、スポーツによる病的心肥大の改善について検討する。 本年度はこのうち(1)と(2)の一部に関して結果を得た。実験系としては、ラット(6週齢、雄)を(1)正常ラットの運動負荷群、(2)非負荷群(全てのコントロール)、(3)運動負荷群にAngll拮抗薬(TCV116)を投与した群、(4)SHR(高血圧自然発症ラット)、の4群に分け、14週間後に生理学的所見を得た後、心臓を摘出しその重量を測定、またRNAを抽出した。その結果、運動負荷群、SHR群で顕著な心肥大が確認された。運動負荷群による心肥大はRA系を遮断するAngll拮抗薬(TCV116)投与では抑制されなかった。また、収縮力の強いミオシン重鎖のサブタイプαと心機能亢進の指標とされるCa^<2+>/H^+ATPaseのmRNAがスポーツ性肥大心で増加した。逆に、病的肥大心ではCa^<2+>/H^+ATPaseのmRNAでは低下していた。以上より、病的心肥大と異なりスポーツ性心肥大の形成にRA系は関与しないことが分かり、幾つかの遺伝子の発現パターンにも相違があることから、同じ心肥大でありながら両者は形成機序、質ともに異なることが明らかとなった。
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