1997 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド性神経伝達物質の遊離機構ならびに遊離制御システムの解明
Project/Area Number |
09670093
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
仲田 義啓 広島大学, 医学部, 教授 (40133152)
|
Keywords | サブスタンスP / 一次知覚神経 / ラット脊髄後根神経節培養細胞 / インターロイキン-1β / PPTmRNA / 遊離 |
Research Abstract |
サブスタンスP(SP)は、侵害情報を伝達するペプチド性神経伝達物質であり、末梢の疼痛刺激により、脊髄後角において一次知覚神経終末部から放出される。伝達物質の遊離はその神経の出力を示すものである。従って、SP遊離機構を解明することは一次知覚神経の活動度を調節する機構を解明するものであり、痛覚伝達を制御しうる機構を見い出すものである。本研究では、SPの遊離機構解明の目的で、一次知覚神経に着目し脊髄後根神経節(DRG)細胞の初代培養を行った。成熟ラットからDRGを単離し、酵素処理することにより分散させ、初代培養細胞を作成することに成功した。インターロイキン-1β(IL-1β)は炎症に関わるサイトカインである。炎症時に痛覚過敏が起こることから、培養DRG細胞SPに及ぼすIL-1βの影響について検討した。その結果、培養DRG細胞SP量はIL-1β処置1日後に減少し、7日間処置により増加した。培養DRG細胞からRNAを抽出しSP前駆体(PPT)mRNA解析を行った結果、IL-1β7日間処置によりPPTmRNAの有意な増加が観察された。IL-1βの培養DRG細胞内SP量増加はIL-1受容体アンタゴニストで抑制された。IL-1β1日処置によるSP量減少についてSPの遊離を推測し、培養液中のSP量を測定した。IL-1β処置細胞の培養液中には対照に比較してより高濃度のSPが存在していた。従ってIL-1βは、培養DRG細胞からSPの遊離を誘発し、その後転写の促進によるSP生合成量増加を引き起こすことがわかった。これはIL-1受容体を介した作用であることが示唆され、IL-1βによる痛覚過敏のメカニズムの一部を説明しうる作用と考えられる。
|