1997 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド前駆体蛋白質高発現ニューロンの作製とその変性過程の解析
Project/Area Number |
09670099
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagano College of Nursing |
Principal Investigator |
林 要喜知 長野県看護大学, 看護学部・生物学教室, 助教授 (70173044)
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Keywords | アミロイド前駆体蛋白質 / アデノウイルス / アルツハイマー病病態モデル細胞 |
Research Abstract |
アルツハイマー病アミロイド前駆体蛋白質(APP)が過剰発現すると培養株化細胞の変性死滅を引き起こす。本研究では、同様なことがヒト脳組織により近いラット初代培養神経細胞で起こるか否かを調べた。まず、非分裂成熟神経細胞を実験的に調整するため、ラット胎児海馬ニューロンを無血清条件化で長期培養する系の作製を試みた。その結果、グルタミン酸感受性、細胞内Ca濃度、形態、神経特異的分子の発現などから成熟ニューロンと判断出来る初代培養系を約4〜5週間の培養で作製できた。次に、この成熟ニューロンにAPP遺伝子導入するため、アデノウイルスベクターを用いてベクター構築を進め、超遠心法による高力価ウイルスサンプルを調整した。本長期培養ニューロンにAPP遺伝子導入を実施したところ、90%以上の高効率遺伝子導入が確認できた。興味深いことには、アデノウイルス感染ニューロンはAPP発現上昇とともに変性を始め、ウイルス暴露3〜4日目にほぼすべての感染ニューロンが死滅した。対照群として、β-gal遺伝子を含むアデノウイルスや外来遺伝子を含まないアデノウイルスを用いたところ、同様な著しい細胞変性・死滅が全く認められなかった。本ニューロンの細胞死は、タネル法で陽性反応を示したことから、APP誘導によるアポトーシス様細胞死と考えられた。次に、この細胞死を抑制する作用について様々な物質の効果を検討したところ、線維芽細胞増殖因子(bFGF)や神経成長因子(NGF)が成熟ニューロンの変性死滅を遅延させる作用があることが判明した。以上、本実験系は、孤発性アルツハイマー病の病態モデル細胞として極めて興味深い実験系であると考えられた。現在、アデノウイルスでBcl-2遺伝子を導入し、APP遺伝子による細胞変性阻止効果がるか否かを調べており、さらに、カスペース3などの関与をも検討したい。また、本細胞死に関わる分子機構解明を進めるともに、アルツハイマー病治療薬候補物質のinvitro評価系としての可能性もあわせて検討していきたい。
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