1998 Fiscal Year Annual Research Report
アミロイド前駆体蛋白質高発現ニューロンの作製とその変性過程の解析
Project/Area Number |
09670099
|
Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
林 要喜知 旭川医科大学, 医学部, 教授 (70173044)
|
Keywords | アミロイド前駆体蛋白質 / アデノウィルス / アルツハイマー病病態モデル細胞 |
Research Abstract |
ウイルスベクターを用いたこれまでの遺伝子導入実験により、アミロイド前駆体蛋白質(APP)が過剰産生した培養海馬ニューロンは、3〜4日間で変性/死滅することを確認した。今年度は、この過程を遅延させたり進行を阻止する分子が存在するか否か、さらには、この細胞変性/死滅過程にはどのような遺伝子群が関与しているかを明らかにする実験を開始した。まず、カスペース3の阻害剤で処理しながらAPP遺伝子導入を実施したところ、一過性の効果ではあるが、有意に海馬ニューロンの変性を遅延させることが明らかになった。しかし、カスペース1の阻害剤では、それ程明確な効果が認められなかった。抗酸化作用を持つ各種ビタミン類を同様に検討したが、どれも有効な阻害効果を示さなかった。次に、神経栄養因子の処理効果を比較検討したところ、ニューロンの培養上清に含まれる因子活性や近年栄養因子活性が示されたM-CSF(マクロファージコロニー刺激因子)などに、細胞変性や死滅を遅延させる性質が認められた。しかし、神経成長因子であるNGFやその仲間のNT-3やBDNFなどにはそのような効果は検出できなかった。これらのことから、本実験系における細胞死には、種々のアポトーシスに関与しているカスペース類の働きが示唆されたが、その系路を制御する生体因子については、存在が予想されるものの、さらに十分検討することが必要と考えられた。 一方、本細胞変性過程に関わっている細胞内分子の探索/同定をおこなうため、ウイルスベクターによるAPP遺伝子導入後、その培養ニューロンからmRNAを経時的に調整した。差分法およびディファレンシャルディスプレイ法により、遺伝子発現が変化する候補分子の2クローンを見い出した。今後、この遺伝子の発現変化に関して再現性が得られれば、これら遺伝子断片のDNA塩基配列し、ノーザンブロットなどにより細胞変性との関わりを詳細に調べる予定である。
|
-
[Publications] Murase,S.,and Hayashi,Y.: "Expression of c-fms proto-oncogene M-CSF receptor in Purkinje cells during postnatal development" J.Neuroscience. 24. 10481-10492 (1998)
-
[Publications] Murase,S.,Motoyoshi,K.,and Hayashi,Y.: "Expression of c-fms proto-oncogene/M-CSF receptor in postnatal Purkinje cells : possible function of M-CSF in the central nervous system. In : Frontiers of Neural Development,edited by Uemura, K.,Kawamura,K.,and Yazaki,T." Springer-Verlag Tokyo. 186-195 (1999)