1998 Fiscal Year Annual Research Report
アルミニウム毒性の発現機構-還元型NADP生成反応と活性酸素の関与の解析
Project/Area Number |
09670163
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Research Institution | AICHI MEDICAL UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉野 昌孝 愛知医科大学, 医学部, 教授 (70046077)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村上 恵子 愛知医科大学, 医学部, 助手 (10139652)
坪内 涼子 愛知医科大学, 医学部, 助手 (30140049)
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Keywords | アルミニウム / 活性酸素 / ヒドロキシルラジカル / NADP-イソクエン酸脱水素酵素 / 還移金属 / PC12細胞 |
Research Abstract |
1. アルミニウム/ATP相互作用とポリアミンによるアルミニウム阻害の解除機構 アルミニウムはグリセロールキナーゼに対し、Al/ATPとして基質Mg/ATPに対して拮抗する形式で阻害しこの阻害はポリアミン、とくにスペルミンによって解除された。Al-ATPに対するスペルミンの作用を核磁気共鳴法(NMR)を用いて解析した。酸性ではAl^<3+>は対称性のよいAl(H_2O)_6^<3+>として存在し、鋭い信号を与えるが、ATPの添加により約4ppm高磁場にAl-ATPと考えられるブロードな信号となって現れる。スペルミンの過剰添加によってAl-ATPの信号は小さくなり、Al(H_2O)_6^<3+>のシャープな信号が大きくなることから、スペルミンはAl-ATPからATPを奪ってスペルミン-ATP複合体を形成し、アルミニウムの阻害活性を消失させたものと考えられた。一方スペルミンはMg-ATP,Mn-ATP複合体からのMg,Mnの遊離は起こさず、ATP-金属複合体の結合がより強固になる傾向が認められた。ポリアミンによるグリセロールキナーゼのアルミニウム阻害の解除機構はNMRのデータによってよく説明される。 2. アルミニウムによる活性酸素傷害促進機構の解析 遷移金属触媒による膜脂質の酸化傷害をアルミニウムが促進することを見出し、アルミニウムが鉄イオンを二価の還元状態に保つことによって、プロオキシダントとして作用することを明らかにした。さらに神経由来の培養細胞としてPC12を用い、アルミニウムと複合体を作るマルトールを加えて細胞に取り込ませることによって、活性酸素傷害から、アポトーシスを引き起こすことに成功した。 3. 活性酸素消去系酵素のアルミニウムによる阻害と酸化傷害の生理機能 還元型NADPを生成することによって活性酸素消去系酵素として働くNADP-イソクエン酸脱水素酵素がアルミニウムによって阻害されることに加えて、本酵素が遷移金属を引き金とした酸化傷害を受け、さらにアルミニウムにより酸化傷害が促進されることを明らかにした。 アルミニウムイオンは(1)プロオキシダントとなる鉄イオンの還元状態の維持、および(2)NADPイソクエン酸脱水素酵素の阻害、並びに酵素の酸化傷害による還元型NADP生成の低下に基づく活性酸素消去能の低下を引き起こすことによって、毒性を発揮することを明らかにした。
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[Publications] Murakami,K.et al.: "Role of metal cations the regulation of NADP-linked isocitrate dehydrogenase from porcine heart" BioMetals. 10. 169-174 (1997)
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[Publications] Murakami,K.et al.: "Antioxidant Effect of Dipicolinic acid on the Metal-catalyzed Lipid Peroxidation and Enzyme Inactivation" Biomedical Res.19. 205-208 (1998)
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[Publications] Yoshino,M.et al.: "Interaction of aluminum ion with ATP. Mechanism of the aluminum inhibition of glycerol kinase and its reversal by spermine" BioMetals. 11. 63-67 (1998)
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[Publications] Yoshino,M.and Murakami,K.: "Inhibition of AMP deaminase by alkylsulfonate compounds" Environ.Toxicol.Pharmacol.5. 215-217 (1998)
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[Publications] Yoshino,M.Murakami,K.: "Interaction of iron with polyphenolic compounds. Application to antioxidant characterization" Anal.Biochem.257. 40-44 (1998)
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[Publications] Yoshino,M.et al.: "Prooxidant action of aluminum Ion. Stimulation of iron-mediated lipid peroxidation by aluminum" BioMetals. 12(in press). (1999)