1997 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺腫瘍の間質血管の特性とその新生・発達機構に関する分子病理学的解析
Project/Area Number |
09670180
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | 山梨医科大学 |
Principal Investigator |
加藤 良平 山梨医科大学, 医学部, 助教授 (30152755)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川生 明 山梨医科大学, 医学部, 教授 (30059224)
鈴木 幸一 山梨医科大学, 医学部, 助手 (20206478)
|
Keywords | 血管新生 / 甲状腺腫瘍 / 血管内皮増殖因子 / 分子病理学 |
Research Abstract |
現在まで,甲状腺腫瘍における血管内皮増殖因子(VEGF:vascular endothelial growth factor)の発現について種々の組織化学的および免疫組織化学的手法を用いて検討してきた.RT-PCRでは検索した甲状腺腫瘍の全ての症例でVEGFmRNA(VEGF_<121>,VEGF_<165>,VEGF_<189>)の発現が認められ,またNorthern blot hybridizationでは正常甲状腺組織に比較して腫瘍組織でVEGFmRNAの発現がより高いことがわかった.in situ hybridizationでVEGFmRNAの局在を検討してみると,正常甲状腺組織では孤立性瀘胞の上皮細胞にその陽性所見を認めたが,免疫染色によるVEGF蛋白は瀘胞上皮細胞と血管内皮細胞に陽性像を認めた(パラクリン機構).腫瘍組織ではVEGFmRNAの発現はびまん性を示す傾向が認められた.乳頭癌組織ではしばしば強いVEGFmRNAの発現が見られたが,一般的に瀘胞構造部の上皮細胞ではVEGFmRNAの発現が弱く,乳頭状の構造部で強い発現が見いだされた.また未分化癌ではVEGFmRNAの発現が特に強くみられ,とくに壊死像の周囲の癌細胞に強い発現が認められた.VEGF蛋白の局在も免疫組織学的に検討したが,in situ hybridizationの結果に類似していた.以上のことからVEGFは甲状腺腫瘍の血管の新生やその透過性の制御に重要な役割を果たしていることが示唆され,とくに未分化癌での強い発現は極めて予後不良である本腫瘍の治療に関して一つの手がかりとなる可能性がある.
|