1997 Fiscal Year Annual Research Report
フェノバルビタールの肝発癌抑制能と肝細胞アポトーシス誘発能に関する研究
Project/Area Number |
09670213
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
李 康弘 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (10261405)
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Keywords | フェノバルビタール / マウス / 肝発癌 / 抑制 / 増殖 / アポトーシス / Bcl-2 |
Research Abstract |
Phenobarbital(PB)はdiethylnitrosamine(DEN)等の癌原物質によって惹起される、ラットの化学肝発癌を促進する腫瘍プロモーターとして知られている。マウスにおいてもPBの肝プロモーター作用は証明されているが、ラットの場合と異なり、むしろ肝腫瘍の発生がPBにより抑制される事例も報告されている。例えば、成体のB6C3F_1マウスにDENを1回投与後、慢性的にPBを与えると、ラットと同様肝腫瘍の発生は有意に促進される。しかしながら、離乳前の同マウスにDENを投与し、離乳後よりPBの慢性投与を開始した場合、肝発癌は逆に強く抑制される。本年度はこのB6C3F_1マウス肝発癌に対するPBの逆説的抑制作用の機構につき、以下の諸点を明らかにした。 1.離乳前のB6C3F_1マウスをDENで処理した際に発生する前癌肝病変は、成体の同マウスを処理して発生するものとは質的に異なる。前者の多くは、アポトーシス抑制蛋白として知られるBcl-2陽性であるが、後者の大部分は陰性である。 2.PBはBcl-2陽性の前癌病変の発育を抑制するが、Bcl-2陰性病変の発育は促進する。よって、DENの投与時期によって、PBの作用は逆転する。 3.PBによるBcl-2陽性病変の発育抑制作用は、アポトーシスの誘発によるものではなく、むしろ、細胞増殖の抑制を介するものである。 我々は、試験管内の実験系を用いて、PBがc-mycの過剰発現と協調して、マウス肝細胞にアポトーシスを誘導する事実を発見し、報告してきた。当初、我々はこのPBのアポトーシス誘発能が、生体内におけるPBの肝発癌抑制作用にも関与するものと推測していたが、本研究により、この仮説が誤りであることが明らかになった。興味深いことに、PBが増殖抑制効果を示す病変は、Bcl-2陽性であり、この蛋白の存在により、アポトーシス誘発がブロックされている可能性がある。今後さらに、Bcl-2陽性病変に対するPBの生物学的及び分子生物学的作用の機構を明らかにしていく。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Osanai,M.: "Phenobarbital causes apoptosis in conditionally immortalized mouse hepatocytes depending on deregulated c-myc expression:characterization of an unexpected effect." Cancer Res.57. 2896-2903 (1997)
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[Publications] Lee,G.-H.: "Correlation between Bcl-2 expression and histopathology in diethylnitrosamine-induced mouse hepatocellular tumors." Am.J.Pathol.151. 957-962 (1997)
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[Publications] Karasaki,H.: "Roles of the Pasl and Par2 genes in determination of the unique,intermediate susceptibility of BALB/cByJ mice to urethane-induction of lung carcinogenesis:differential effects on tumor multiplicity,size and Kras2 mutations." Oncogene. 15. 1833-1840 (1997)
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[Publications] Lee,G.-H.: "Genetic dissection of susceptibility to murine ovarian teratomas that originate from parthenogenetic oocytes." Cancer Res.57. 590-593 (1997)
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[Publications] Obata,M.: "Loss of heterozygosity at loci on chromosome 4,a common genetic event during the spontaneous immortalization of mouse embryonic fibroblasts." Mol.Carcinog.19. 17-24 (1997)