1998 Fiscal Year Annual Research Report
フェノバルビタールの肝発癌抑制能と肝細胞アポトーシス誘発能に関する研究
Project/Area Number |
09670213
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
李 康弘 旭川医科大学, 医学部, 助教授 (10261405)
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Keywords | フェノバルビタール / 化学肝発癌 / 抑制 / マウス |
Research Abstract |
Phenobarbital(PB)はdiethylnitrosamine(DEN)等の化学癌原物質により惹起されるラット肝発癌を促進する古典的肝プロモーターとして知られている。しかし,PBのマウスに対する作用はラットに対するよりも複雑であり,肝発癌促進作用を示す事例のみならず,実験条件によっては逆に抑制作用を示す事例も報告されている。例えば,成体のB6C3F1マウスにDENを投与した後,PBを含む食餌を慢性的に与えると,肝腫瘍の発生数は対照群に比べ約5倍増加する。一方,離乳前の同マウスをDENを処理した後PBを与えると,腫瘍数は約10分の1に減少する。昨年度に引き続き,本年度はB6C3F1マウスのDEN起始肝発癌に対するPBの逆説的作用につき解析を加え,以下の諸点を明らかにしてきた。1)投与齢にかかわらず,DEN単独で誘発された肝腫瘍の約9割以上は病理組織学的に好塩基性肝細胞腺腫に属し,その殆ど全てがアポトーシス抑制蛋白として知られるBcl-2を発現している。正常肝細胞はBcl-2陰性である。2)成体マウスをDEN処理した後,PBによるプロモーションを加えた際に発生する肝腫瘍の8割以上は好酸性肝細胞腺腫であり,それらはBcl-2陰性である。3)離乳前マウスをDEN処理し,PBによる抑制を加えた時に観察される腫瘍の9割以上は,DEN単独の場合と同様Bcl-2陽性の好塩基性肝細胞腺腫であるが,その際,好塩基性肝細胞腺腫細胞のproliferating nuclear antigen(PCNA)陽性率はDEN単独の対照に比べ,3分の1に減少している。PB投与による好塩基性肝細胞腺腫細胞のアポトーシス頻度の変化は見られない。以上の事実より,我々は,PBが好酸性肝細胞腺腫の発生を促進する一方,好塩基性肝細胞腺腫細胞の増殖は強く抑制し,その発生を妨げているものと結論した。さらに,成体B6C3FlマウスをDEN処理した場合,好酸性,好塩基性の両腺腫前駆細胞が惹起されるのに対し,離乳前B6C3F1マウスをDEN処理した場合は殆ど選択的に好塩基性腺腫前駆細胞のみが惹起されるため,PBの一見逆説的な作用が観察されるものと考えた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Lee,G.-H.: "Mechanism of the paradoxical,inhibitory effect of phenobarbital on hepatocarcinogenesis initiated in infant B6C3F1 mice with diethylnitrosamine." Cancer Research. 58. 1665-1669 (1998)
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[Publications] Lee,G.-H.: "Genetic dissection of murine susceptibilities to liver and lung tumors based on the two-stage concept of carcinogenesis." Pathology International. 48. 925-933 (1998)