1998 Fiscal Year Annual Research Report
サイトトキシン変換ファージの進化と毒素遺伝子の水平伝播に関する分子遺伝学的研究
Project/Area Number |
09670277
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
林 哲也 信州大学, 医学部, 助教授 (10173014)
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Keywords | サイトトキシン / バクテリオファージ / バクテリオシン / 分子進化 / 溶菌遺伝子 |
Research Abstract |
1 3種類のΦCTX類縁ファージの全ゲノム構造解析を目的として、昨年度決定したΦCTXファージの全塩基配列を基に、ファージゲノム全体をカバーする20対のプライマーセットを合成した。各々のファージあるいはその溶原株の染色体DNAを鋳型DNAとしてPCRを行い、得られたPCR産物の有無とサイズをΦCTXのものと比較することによって、ΦCTXと3種のファージのゲノム構造の違いを検討した結果、基本的にはこれらのファージがΦCTXと同様のゲノム構造を持ち、塩基配列も非常によく保存されていること、また一方では各々のファージに存在するΦCTXとは異なるDNA領域も明らかとなった。このPCRを使った近縁ゲノムの解析法(PCR scanningと呼ぶ)は、近縁ゲノムの比較解析の手法としては全く新しい方法であり、今後様々なゲノム解析に応用できると思われる。 2 ΦCTXファージゲノム上に存在する種々の遺伝子のうち、溶菌関連遺伝子と考えられる遺伝子群の各々をPCR法を用いてクローン化し、大腸菌と緑膿菌においてin vivo機能解析を行った。その結果、holin、anti-holin、溶菌酵素遺伝子が同定された。 3 ΦCTXファージがRピオシン(ファージ尾部様構造を持つバクテリオシン)と血清学的にも遺伝学的にも関係があることが既に明らかとなっているため、RピオシンののうちPAO1株由来のR2ピオシン遺伝子領域のDNA塩基配列を決定し、その解析を行った。その結果、P2ファージあるいはΦCTXファージとRピオシンの遺伝的関係を明確にすることができた。さらに、R2遺伝子群に隣接して存在しているF2ピオシン領域についても塩基配列の決定を行い、F2ピオシンとラムダファージあるいはその類縁ファージとの遺伝的関係を明らかにした。
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