1998 Fiscal Year Annual Research Report
インフルエンザウイルスによる宿主細胞障害の分子機構とその応用
Project/Area Number |
09670326
|
Research Institution | Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center |
Principal Investigator |
滝澤 剛則 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 生化学部, 室長 (40192158)
|
Keywords | インフルエンザウイルス / アポトーシス / カスパーゼ / NS1 |
Research Abstract |
本年度の検討課題は次の通りであった。1.カスパーゼ阻害因子のインフルエンザウイルスによるアポトーシスへの影響。2.カスパーゼ阻害因子のウイルス複製への影響。3.ウイルスゲノムへのカスパーゼ阻害ペプチドの導入。[結果および考察]1.カスパーゼ阻害ペプチドz-VAD-fmk、z-IETD-fmk、ウイルス由来のカスパーゼ阻害因子crmA、FLIPは、いずれもインフルエンザウイルスによるアポトーシスを抑制した。しかしながら、Ac-DEVD-CHO、Ac-YVAD-CHOはそれぞれ効果が少ないか、効果が認められなかった。2.カスパーゼ阻害ペプチド存在下でもウイルスの蛋白合成、培養上清のウイルス力価に変化はなかった。これらの結果から、ある種のカスパーゼがインフルエンザウイルス感染に伴って活性化し、それらを抑制することによりアポトーシスが抑制されること、しかしながら、カスパーゼの活性化はウイルス複製の下流に位置するため、カスパーゼを抑制してもウイルスの増殖は阻害しないことが考えられた。3.カスパーゼの阻害ペプチドをNS1遺伝子に導入した。ペプチドとして、p35、crmA、PARP、IL1βに存在するカスパーゼ切断配列部位、およびそれらの変異配列を用いた。また、組み換えNS1発現細胞を視覚化するため、EGFP-ペプチド-NS1の融合遺伝子を構築した。各組み換えNS1遺伝子を細胞に導入後、インフルエンザウイルスを感染し、EGFPの蛍光をもつ細胞について観察したところ、p35、PARPの切断配列をもつNS1発現細胞でアポトーシスの抑制が認められた。また、カスパーゼが作用すると、EGFPとNS1との間で切断されるはずであり、現在ウエスタンブロットにより確認中である。今後は効果の認められた配列をNS1のC末端に組み込み、ウイルスに導入することを試みる予定である。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] 滝澤剛則: "2本鎖RNA依存性キナーゼ(PKR)によるシグナル伝達とアポトーシス" 生化学. 70. 362-365 (1998)
-
[Publications] 滝澤剛則: "ウイルス感染とアポトーシス-インフルエンザウイルスによる誘導機構" 医学のあゆみ. 187. 422-427 (1998)
-
[Publications] Fujimoto,I: "Co-expression of Fas and its ligand on the surface of influenza virus-infected cells." Cell Death and Differentiation. 5. 426-431 (1998)
-
[Publications] Takizawa,T.: "Double-stranded RNA-activated protein kinase(PKR)fused to green fluorescent protein induces apoptosis in human embryonic kidney cells:Possible role in Fas signaling pathway." Journal of Biochemistry. 125. 391-398 (1999)
-
[Publications] Takizawa,T.: "Recruitment of apoptotic cysteine proteases(caspases)in influenza virus-induced cell death." Microbiology and Immunology. 43(印刷中). (1999)