1998 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ系細胞の分化及び活性化におけるp38Lnkの役割
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09670331
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 智 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10242116)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高津 聖志 東京大学, 医科学研究所, 教授 (10107055)
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Keywords | アダプター蛋白質 / Lnk / B細胞分化 / リンパ球分化 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
リンパ系組織で比較的強く発現されるLnkは、SH2ドメインとチロシンキナーゼが認識可能な配列を持つ細施内アダプター蛋白質である。LnkはT細胞受容体(TCR)刺激によりチロシンリン酸化を受けGrb2、PLC-γと結合するとの報告からTCRシグナル伝達での役割が注目されていたがその機能について詳細は不明であった。本研究ではLnkのリンパ球分化および生体内における役割をLnkトランスジェニックマウス(Lnk一TG)、Lnk欠損マウス(Lnk-/-)を作製して検討した。 胸線細胞でLnkを過剰発現するLnk-TGでは、胸線細胞の分化および増殖に大きな変化はなかった。またTCR刺激で誘導さ入るLnkのリン酸化は非常は弱かった。Lnk-/-は正常に生まれ成熟し生殖も可能であった。 驚いたことにLnk-/-ではT細胞の分化、増殖反応に全く異常はみられなかった。しかしながら脾臓および骨髄のB細胞、B前駆細胞数が顕著に増加しておりB細胞の過剰産生が観察された。Lnk-/一の骨髄細胞を放射線照射した野生型マウスに移入するとB細胞の過剰産生が再現されることからLnk-/-におけるB細胞過剰産生はB前駆細胞の異常に起因し、Lnk一/-B前駆細胞は正常よりも高い増殖分化能を持つことがわかった。本研究によりLnkがB前駆細胞の増殖分化誘導シグナルを負に制御することによりB細胞産生量を規定し、生体のホメオスタシス維持に重要な役割を担っていることが初めて明らかになった。今後Lnkとさまざまな造血系疾患との因果関係やLnkを介するシグナル伝達の制御による血液疾患の治療への応用が期待される。
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[Publications] Takaki,S.: "Characterization of Lnk;an adaptor protein expressed in lymphocytes." J.Biol.Chem.272. 14562-14570 (1997)
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[Publications] Alberola-Ila,J.: "Differential signaling by lymphocyte antigen receptors." Annu.Rev.Immunol.15. 125-154 (1997)