Research Abstract |
近年では鉄筋コンクリートのマンションに代表されるように,気密性の高い住居が増えてきている。これらの住居は熱効率がよく,家庭内での省エネに一役かっている。しかしその反面,換気回数が少ないことから,室内の空気汚染が問題となってきている。人は1日の約8割を室内で過ごしているため,空気汚染による健康影響を調べる場合,室内汚染の影響を無視することはできない。わが国ではまだ少数であるが,今日の欧米の空気汚染による健康影響に関する研究は,省エネ政策および家屋の気密化とあいまって,室外汚染よりも室内汚染の方に重きがおかれるようになってきている。さらに,二酸化窒素のような燃焼生成物による汚染に対する関心から,カビ・ダニといった生物的汚染,さらには建材等から放出されるホルムアルデヒド,揮発性有機化合物等による化学的汚染,およびその健康影響(アレルギー,化学物質過敏症等)に関心が移ってきている。 このような観点から,本研究ではカビやダニ,ひいては家庭内の換気・湿度対策に対する基礎データを呈することを目的としている。また,最近の家屋においては,生物的汚染と化学的汚染は密接な関係があるため,新たな問題となっている化学物質による汚染実態およびその健康影響に関しても検討を加える予定である。 研究初年度の本年度は,一般家庭での化学物質による室内汚染状況を知るために,横浜市磯子区を中心に,主にアレルギー素因を持つ子供のいる家庭30軒を対象として,室内空気中のホルムアルデヒド,二酸化窒素,揮発性有機化合物,殺虫剤・防虫剤等に含まれる農薬成分の濃度調査を現在行っている。なお,生物的汚染状況調査,および健康との関連性に関する検討に関しては,次年度より開始する予定である。
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