1998 Fiscal Year Annual Research Report
廃棄物焼却排ガス中の塩素化芳香族による男性不妊のリスクアセスメント
Project/Area Number |
09670360
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Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
井上 尚英 九州大学, 医学部, 教授 (00131904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大村 実 九州大学, 医学部, 助手 (50243936)
平田 美由紀 九州大学, 医学部, 助手 (30156674)
田中 昭代 九州大学, 医学部, 講師 (10136484)
槙田 裕之 九州大学, 医学部, 助教授 (30209407)
増田 義人 第一薬科大学, 教授 (20069743)
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Keywords | 内分泌かく乱物質 / 廃棄物焼却 / 塩素化芳香族炭化水素 / ポリ塩化ナフタレン / 胎内曝露 / Androgenic Status / 精〓毒性 / 男性不妊 |
Research Abstract |
平成9年度には,文献調査に引き続いて,ポリ塩化ナフタレン類への胎内曝露による雄性発育・雄性生殖器系への影響を評価するため妊娠メスラット(妊娠14日目〜16日目)への1,2,3,4,6,7-六塩化ナフタレン(HCN,1μg/kg)の経口投与を行った.今年度は,仔ラットの雄性発育・雄性生殖器系への影響(生後31・48・62・89日目)ならびに被験物質の胎盤・母乳経由のメス仔ラットへの移行を評価した.その結果, (1) HCN投与による母ラットの出産・仔ラットの体重増加に対する影響は認められなかった. (2) Ano-genital distanceおよび精巣下降で見る限り,HCN投与群で雄性発育への影響は認められなかった. (3) HCN群では精巣/精巣上体重量・精子運動能・形態異常精子出現率では対照群と差を認めなかった.精子数は,生後89日目では差を認めなかったが,生後62日目ではHCN群で対照群の2倍近い値を示した.また,副生殖器(精嚢,前立腺前葉)重量も一貫してHCN群で重い傾向が認められた.さらに,血清テストステロン濃度も一貫してHCN群で2倍以上高い値を示した. (4) 母ラット(仔ラット離乳直後)ならびにメス仔ラット(出生直後・離乳直後・生後89日目)の脂肪中HCNの分析結果から,1)HCNはどちらの経路でも仔ラットへ移行するが,母乳経由の割合の方が1桁程度高い 2)仔ラットへ移行したHCNの大部分は生後89日目まで体外に排泄されずに脂肪に留まる 3)出産・授乳によって母ラットの脂肪中HCN量は約半分に減少する,ことが分かった.以上の結果から,HCNへの胎内曝露によって仔ラットの血液中の男性ホルモン濃度が上昇し,そのため精子産生の開始が早まるものと推定された.また,HCNは主に母乳経由で仔ラットへ移行するが,これがメスラットがHCNを体外に“排泄"する主要な経路であることも示された.
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