Research Abstract |
本研究は,加齢に伴う免疫能の低下-免疫老化-を抑制するライフスタイル要因を解明することを目的としている。研究の初年度にあたる本年度の研究実績は以下のとおりである。 1.末梢血液中の白血球総数および分画の免疫老化所見とその関連要因 平成9年度の愛媛県O市の老人保健法に基づく基本健康診査を受診した20〜90歳代3541名について,インフォームドコンセントを得た上で採血を行い,末梢血液中の白血球と各分画の濃度を測定した。これを性,年齢階級別にまとめるとともに,健診で得られたその他の付随データである,BMI,血圧,総コレステロール,中性脂肪,HbAlc,喫煙と飲酒状況との関連分析を行った。その結果,単球以外の免疫担当細胞は加齢にともない漸次濃度が低下していくが,その速度や低下開始年齢は細胞の種類により異なること,また,これら免疫担当細胞の血中濃度は,それぞれBMI,血圧,総コレステロール,中性脂肪,HbAlc,喫煙と飲酒状況などと密接に関連しており,免疫老化が各種ライフスタイル要因により影響を受ける可能性が示唆された。 2.末梢血液中のリンパ球サブセットの濃度と,頸動脈硬化所見との関連分析 上記対象者のうち50〜70歳代の男性119名については,頸部超音波検査により頸動脈硬化所見を調べるとともに,上記項目に加えリンパ球サブセットとT細胞活性化所見を,標識モノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリーにより調べ,両者の関連性を検討した。その結果,頸動脈硬化所見を認めるもの(n=32,27.8%)に,CD8陽性細胞障害性T細胞や活性化CD4陽性ヘルパーT細胞濃度が高いことを認め,老化と関連の深い動脈硬化の進展に,何らかの免疫学的機序が関与する可能性が示唆された。
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