1998 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス負荷時の筋細胞応答能と生体内抗酸化剤の変動
Project/Area Number |
09670421
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
岡本 正志 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (80194398)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 隆幸 神戸学院大学, 薬学部, 助手 (40216726)
紀氏 健雄 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70028843)
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Keywords | heart / glutathione peroxidase / selenium / glutathione / cultured cardiac myocytes / γ-glutamylcysteinylethyl ester / cell injury / oxidative stress |
Research Abstract |
生体の抗酸化酵素の中で、glutathione peroxidas(GSHpx)は必須微景元素としてセレン(Se)を含有し、酸素ラジカルの連鎖反応で生じたH_2O_2や脂質過酸化物をglutathione(GSH)の存在下で還元することができる重要な酵素である。一方、古くから中国克山地方に多発するkeshan disease(克山病)は、生体のSe欠乏が原因とされる慢性的な心臓疾患であるが、その詳細については不明な点も多い。本申請研究では、Se欠乏によって誘発される心筋細胞障害の特徴と、細胞膜透過型GSH誘導体(γ-glutamylcysteinylethyl ester,γ-GCE)によるその防御について検討した。 ラットを妊娠4日目から出産14日後までSe欠乏食で飼育すると、心臓GSH量は正常食飼育群となんら差は認められなかったが、組織Se量は3分の1に低下していた。また、心臓GSHpx活性のGSHに対するVmax値は正常食飼育群のおよそ3分の1に低下したが、Km値には変化は認められなかった。さらに、Se欠乏食飼育群では、新生児ラットの62%に心室性期外収縮や洞性不整脈などの心電図異常が認められ、また、左心室の心拍出量も正常食飼育群の63%にまで低下した。それにともなってSe欠乏食飼育ラットの心臓中の脂質過酸化量も著明に増大した。一方、Se欠乏食飼育群のラットにγ-GCEを投与すると、心臓GSH量は正常食飼育群の2倍に増加し、心電図異常の出現、心拍出量の低下、さらには脂質過酸化量の増加も認められなかった。また、Se欠乏食で飼育したラット胎児培養心筋細胞のH_2O_2による拍動障害は、γ-GCEの添加によって防御された。以上の結果は、Se欠乏によって心筋細胞障害が誘発されること、ならびにその心筋細胞障害は細胞内のGSH量を増大させることによって防御できることを示唆した。
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Research Products
(1 results)