1997 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺機能亢進症モデルマウスにおける抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体産生機序の解析
Project/Area Number |
09670468
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
河野 陽一 千葉大学, 医学部, 助教授 (60161882)
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Keywords | 公甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体 / 甲状腺機能亢進症 / マウス / 主要組織適合抗原 |
Research Abstract |
マウス繊維芽細胞に甲状腺刺激ホルモンレセプター(TSHR)遺伝子を導入して細胞表面に機能的TSHRを発現させ、この細胞をマウスに免役する系を用いて抗TSHR抗体産生の遺伝支配を解析した。マウスに免役した細胞が異物として拒絶されてしまうと免疫が正しく行われないので、免役するマウスと同一の主要組織織適合抗原(H-2抗原)を有する繊維芽細胞(DAP.3)をTSHR遺伝子の導入細胞として選んだ。本研究では、H-2^KであるDAP.3細胞にヒトTSHR遺伝子を導入した。また繊維芽細胞は、その細胞表面にH-2クラスI抗体のみを表出しておりH-2クラスII抗体は表出していない。そこで、TSHRに対する抗体の産生、すなわち液製免疫応答をより強く誘導する目的で、DAP.3細胞にH-2クラスII抗体の一つであるI-A^K分子を発現したRT4.15HP細胞にもTSHRを導入して実験に用いた。これらの細胞を、H-2^Kハプロタイプを有するマウスの腹腔内に6回免疫を行った後にマウスを屠殺して血清甲状腺ホルモン値、抗TSHR抗体価、刺激型抗TSHR抗体価、甲状腺組織像を解析した。 免役するマウスとして、H-2^Kハプロタイプは共通であるが他の遺伝子が異なる5種類の系統のマウス、AKR/N,C3H/He,B10.BR,CBA/J,BALB/Kを用いた。その結果、RT4.15HP-TSHR免疫によって産生される抗TSHR抗体価が各マウスで異なっていることから、抗TSHR抗体の産生は主要組織適合抗体以外の遺伝子によって制御されていることが示唆された。また、2種類のマウス、C3H/HeとBALB/KではDAP.3-TSHR免疫によって抗TSHR抗体は陽性でありながら刺激型抗TSHR抗体は誘導されず、RT-4.15HP-TSHR免疫によってのみ刺激型抗TSHR抗体が誘導された。刺激型抗TSHR抗体が産生されたマウスでは組織学的にヒトバセドウ病に類似の甲状腺腫大が認められた。以上の結果は、刺激型抗TSHR抗体の産生にはTSHRを免疫系に抗原提示する際にH-2クラスII抗体の存在が必須であることを示唆する。
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