1998 Fiscal Year Annual Research Report
C型肝炎ウイルスの多様性獲得機序と宿主免疫機構の関連についての基礎的検討
Project/Area Number |
09670479
|
Research Institution | KYUSHU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
柏木 征三郎 九州大学, 医学部, 教授 (70038826)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鍋島 茂樹 九州大学, 医学部, 助手 (50304796)
|
Keywords | C型肝炎ウイルス / HCV / 持続感染 / Hypervariable Region / HVR / Immune Complex |
Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(Hepatitis Cvirus,HCV)が、宿主の免疫からHCVが逃避し、持続感染を成立させる機序を明らかにする事は、重要な課題である。HCVの遺伝子中に非常に変異の多い領域(Hypervarlable Region,HVR)が同定され、このHVRの変異により、HCVが宿主のCTLや抗体による排除を逃れている可能性が示唆されている。 この可能性を検討する為に、まず感染者の末梢血より、RT-PCR法によりHCV遺伝子の増幅を行い、増幅された材料より、塩基配列を決定した。アミノ酸の変異にならない塩基の変異の頻度は、core領域及びNS5A領域で非常に高く、塩基配列保存への選択的な圧力が示唆された。一方、HVRでは、アミノ酸の変異にならない塩基の変異の頻度は、無作為に変異起こった場合とほぼ同等であった。この成績は、抗体による排除を逃れる為に、HVRに変異が集積している可能性を支持しないものであった。 HCVの一部は、宿主の産生する抗体と結合したImmune Complex(IC)を形成している。今回、患者血清から分画浮遊遠心法によりFreeおよびIC形成HCVを分離し、HVRの塩基配列の決定及びアミノ酸配列の推定をした。HVRの変異が、抗体による排除を逃れる事に寄与しているならば、IC形成HCVのHVRの塩基配列はFreeなHCVのHVRとは分離され、経時的に消失していく事が予想される。しかし、個体内のFreeおよびIC形成HCVのHVR塩基配列は明確には分離されなかった。また、IC形成HCVのHVRは、経時的に大きく変化している例も見られたが、あまり変化しない例も見られた。更に、IC形成HCVのHVRが1年後のFreeなHCVにも認められる例が見られた。これらの成績より、HVRの変異はHCVの持続感染成立のための必須の要件とは考えられなかった。
|
-
[Publications] Kashiwagi S: "Heterosexual transmission of hepatitis C virus among married couples in southwestem Japan." Int J Cancer. 72. 50-55 (1997)
-
[Publications] Kashiwagi S: "Hepatitis C viral quasispecies and liver damege in patients with chronic hepatitis C virus infection." Hepatlogy. 25. 697-701 (1997)