1998 Fiscal Year Annual Research Report
アヒルB型肝炎ウイルスprecore変異株を用いた慢性肝炎モデルの作製とその解析
Project/Area Number |
09670511
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
田川 まさみ 千葉大学, 医学部・附属病院, 助手 (90261916)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
横須賀 収 千葉大学, 医学部, 講師 (90182691)
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Keywords | アヒルB型肝炎ウイルス / precore変異株 / 動物実験モデル |
Research Abstract |
B型肝炎ウイルス(HBV)では困難であったprecore蛋白及びe抗原の機能解析をアヒルB型肝炎ウイルス(DHBV)を用いて検討する目的で、DHBVの野生株とprecore変異株の感染実験を行なった。前年度は感染初期と12週までの検討により、ウイルス増殖に対するprecore蛋白あるいはe抗原の重要性ならびにprecore変異株感染の病理組織像がヒトの慢性肝炎に類似していることを見い出した。Precore変異株感染が慢性感染の経過をどのように修飾しているかを明らかにする為に24週までの長期感染での経過を解析した。 野生株DHBV cloneにpoint mutationを導入したprecore変異株の感染性血清をアヒルに接種、慢性感染したアヒルの4から24週後までの血清と肝組織を採取した。肝組織は、H-E染色による検索を行い、血清中DHBV DNA量と比較した。また、肝内DHBV DNA量および免疫組織染色によるDHBc抗原量の推移も検討した。 野生株感染では24週に至るまで高ウイルス量が保たれ、組織学的変化は軽度であった。Precore変異株のウイルス量は感染初期より低く経過に伴いさらに減少、消失する傾向が認められ、これは肝細胞のfocal necrosisと小葉内リンパ球浸潤が中等度から高度に認められる時期に一致していた。感染6週目におけるDHBc抗原発現はほぼ全肝細胞にみられ野生株との違いは見い出せないが、20週目では小葉内全域での抗原量と感染細胞数の低下が認められた。 小葉内リンパ球浸潤を指標とする炎症所見はprecore変異株感染で著明であり、その経過の後にウイルスの増殖抑制と排除に至ると考えられた。免疫応答の差異を引き起こすウイルス側の要因としては、precore蛋白、e抗原の有無と、その他のウイルス関連抗原の発現量の多寡が考えられ、個々の蛋白の発現量と免疫応答に対する作用について詳細な検討が必要と考えられた。
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