1998 Fiscal Year Annual Research Report
自己免疫性肝炎における免疫調節機能の異常とTGF-βによる調節
Project/Area Number |
09670552
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
坂口 孝作 岡山大学, 医学部・付属病院, 助手 (90235143)
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Keywords | 自己免疫性肝炎 / TGF-β / TGF-β receptor II |
Research Abstract |
TGF-βは炎症後の繊維化促進あるいは抑制性サイトカインとして免疫抑制機序に関連する。今年度は、自己免疫性肝炎における血清中TGF-βの濃度、さらに末梢血単核球におけるTGF-βレセプタータイブII(TβRII)を測定し、自己免疫性肝炎の病態の発現におけるTGF-βの役割について検討した。血清中TGF-βはELISA法で測定し、末梢血単核球のTβRIIはprotectionassay法で測定した。自己免疫性肝炎患者11例の血清中TGF-β濃度は345.0±133.6ng/mlであり、C型慢性肝炎患者、健常者のTGF-β濃度(171.7±40.0、141.5±76.3ng/ml)より有意に高値を示した。また、自己免疫性肝炎患者の血清TGF-β濃度はプレドニン治療後には低下した(241.7±92.1ng/ml)。TGF-β濃度の低下は、プレドニン治療による自己免疫性肝炎の肝繊維化の抑制に関連するものと推測される。一方、末梢血単核球のTβRIIは、自己免疫性肝炎患者では0.190±0.068と、C型慢性肝炎0.175±0.079、健常者0.176±0.070に比較して高い値を示した。プレドニン治療により自己免疫性肝炎患者の末梢血単核球のTβRIIも低下した(0.125±0.044)。自己免疫性肝炎では血消中TGF-β濃度、末梢血単核球のTβRIIの発現は高く、この病態は自己免疫性肝炎の免疫系亢進病態とは矛盾する。最近、smadをはじめとするTGF-βの細胞内シグナル経路に関連する物質が判明し、そのシグナル経路が明らかになりつつある。次年度には、自己免疫性肝炎でのTGF-βの細胞内シグナル経路からの免疫系抑制の低下機序の解明を目的とする。また、TβRII発現も高い状態であるから、リンパ球のTGF-βに対する反応性の回復および増強機構の解明を目的に検討し、研究のまとめとする。
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[Publications] 毛利裕一: "肝癌産生性TGF-βによる抹消血単核球からのIFN-γ、TNF-α分泌に与える影響" 消化器と免疫. 34. 255-257 (1997)
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[Publications] M.Kitano: "Prevalence of hepatitis G virus (HGV) infection in an endemic area of hepatitis C virus (HCV) infection" J Hepato-Gastroenterology. in press.