1998 Fiscal Year Annual Research Report
好酸球による胆管傷害機構の解析-PBC動物モデルの開発
Project/Area Number |
09670555
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Research Institution | KOCHI MEDICAL SCHOOL |
Principal Investigator |
前田 隆 高知医科大学, 医学部・付属病院, 講師 (80183606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩崎 信二 高知医科大学, 医学部, 助手 (10232654)
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Keywords | 好酸球 / 原発性胆汁性肝硬変 / LPS / IL-5 / クッパー細胞 |
Research Abstract |
移植肝やGVHD、あるいは慢性GVHDに類似する原発性胆汁性肝硬変(PBC)などでみられる肝細胞障害や胆管細胞障害に活性化好酸球の関与が想定されるが、詳細な解析は成されていない。我々はIL-5 transgenic(IL5Tg)マウスを用いて、好酸球(Eo)による肝障害モデルを初めて開発した。 <方法>IL5Tgマウス:C3H/HeN-TgN(IL-5)Imeqの雌10匹と、対照としてIL5Tgマウスと同系の雌6匹を用い、LPS(Salmonella minesota Re 595)25μgを1回腹腔内に投与した。2週間後に肝臓、その他の臓器を取り出し、光顕および電顕観察を行った。また取り出したIL5Tgマウスの脾細胞2×10^7個をC3H/HeNに経静脈的に移入し、2週間後に同様の観察をした。末梢血好酸球数の割合は30-70%(平均50%、対照群は0-5%)程度である。 <結果>対照マウスの肝組織には異常を認めないが、IL5Tgマウスの肝門脈域には多数の好酸球にリンパ球、形質細胞を混じる強い炎症細胞浸潤を認めた(Eo>50%)。また、小型小葉間胆管の周辺には好酸球が集族し、好酸球の胆管上皮内への浸潤や、胆管の変性、破壊像が認めた。さらに肝小葉内には大きな壊死部が見られ、その周辺部には好酸球を中心とする強い炎症細胞浸潤(Eo>50%)を認めた。電顕では、胆管上皮細胞へ好酸球が近接し、好酸球細胞障害性顆粒の脱顆粒像や顆粒の胆管上皮内への移行像もみられた。肝臓以外では、脾臓が対照群に比べて3-10倍程度に腫大し、白脾髄に著明な好酸球浸潤を認めた。一部の胸腺やリンパ節、肺に極く軽度の好酸球浸潤を見たが、その他の臓器には好酸球浸澗は認めなかった。脾細胞移入実験では正常C3H/HeNには肝障害は惹起されず、活性化好酸球の移入のみでは肝障害が生じない事が明らかになった。 <考案>LPS投与IL5Tgマウスでは肝臓への強い好酸球浸潤と高度の肝組織障害を認め、光顕像や電顕像より胆管障害への好酸球の関与が強く示唆された。LPSが肝小葉内のKupffer細胞に貪食され、TNF-αなどの各種サイトカインの産生、好酸球遊走因子の活性化が起こり、肝臓への好酸球の遊走、浸潤、脱顆粒により、肝組織障害が生じたと想定され、これらの解析が必要である。
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