1997 Fiscal Year Annual Research Report
炎症性腸疾患におけるマトリックスメタロプロテアーゼと潰瘍形成の関連
Project/Area Number |
09670559
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
伊東 文生 札幌医科大学, 医学部, 講師 (90223180)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今井 浩三 札幌医科大学, 医学部, 教授 (60117603)
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Keywords | 潰瘍性大腸炎 / マトリックスメタロプロテアーゼ / マトリライシン / TIMP-1 / TIMP-2 / 潰瘍形成 |
Research Abstract |
マトリライシンは細胞外基質を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)のファミリーであり、その活性はmRNAあるいは蛋白の発現レベルで最初の調節を受ける。さらに、生理的な阻害分子であるTissue Inhibitor of Matrixmetalloproteinase(TIMP)によって調節をうけ、生理的条件下ではきわめて厳重な活性調節がなされている。これまでの研究で、消化器癌においてマトリライシンが高頻度に過剰発現し、浸潤・転移と関連することを明らかにしてきた。一方、マトリライシンの発現は炎症性サイトカインなどにより誘導されること、慢性関節リウマチの滑膜細胞においてマトリライシンの発現が報告されていることなどにより炎症性疾患におけるマトリライシン発現と病態との関連は興味部深い。潰瘍性大腸炎においては、組織破壊あるいは再構築にMMPをはじめとするプロテアーゼが関連することが推察されるが、セリンプロテアーゼの発現が少数例で報告されているのみであり、詳細は明らかではない。今年度の研究では、潰瘍性大腸炎におけるマトリライシンおよびそのインヒビターであるTIMPの発現を検討した。マトリライシンは潰瘍性大腸炎の潰瘍辺縁部(きわめて炎症が強く、組織破壊が著明である部位)の上皮細胞に検討した全ての症例で明かな発現を認めた。同部位にはマトリライシンの内因性阻害分子であるTIMP-1およびTIMP-2の2種類のインヒビターはいずれも発現しておらず、マトリライシンの活性が優位な状態であることが明らかになった。また、Matts grade 1-2程度の緩解に近い上皮の生検組織あるいは正常の大腸上皮細胞にはマトリライシンの発現は検出されていない。炎症極期にのみマトリライシンが発現していることにより、その発現は潰瘍形成後の組織再構築に関連するものと推察され、潰瘍性大腸炎におけるマトリライシン発現の意義、さらには癌化との関連などにつき検討を続行している。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Yamamoto H,Itoh F,Imai K,et al.: "Infrequent inactivation of DCC gene in replication error-positive colorectal cancers." Biochem Biophys Res Commun. (in press). (1998)
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[Publications] Yamamoto H,Itoh F,Imai K,et al.: "Relationship of enhanced secretion of active matrix metalloproteinase with tumor spread in human hepatocellular carcinoma." Gastroenterology. 112. 1290-1296 (1997)
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[Publications] Yamamoto H,Itoh F,Imai K,et al.: "Association of reduced cell adhesion regulator messenger RNA expression with tumor progression in human hepatocellular carcinoma." Int J Cancer. 74. 251-254 (1997)
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[Publications] Takaoka A,Itoh F,Imai K,et al.: "Expression and identification of aberrant c-kit transcripts in human cancer cells." Cancer Letter. 115. 257-261 (1997)
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[Publications] Kawaharata H,Itoh F,Imai K,et al.: "Decreased sensitivity of carcinoembryonic antigen cDNA-transfected cells to adriamycin." Int J Cancer. 72. 377-382 (1997)
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[Publications] Akashi H,Itoh F,Imai K,et al.: "A novel gastric-cancer-associated mucin antigen defined by a monoclonal antibody A3D4." Int J Cancer. 73. 795-801 (1997)
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[Publications] 足立 靖、伊東文生: "(続)がんの浸潤・転移研究マニュアル" 入村達郎編(金芳堂), 3 (1997)