1998 Fiscal Year Annual Research Report
新しい発癌因子としての自律神経の過興奮に関する研究-癌遺伝子とアポトーシスの発現に関する神経因子の役割
Project/Area Number |
09670562
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
木場 崇剛 横浜市立大学, 医学部, 助手 (80285139)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関原 久彦 横浜市立大学, 医学部, 教授 (80126094)
田中 克明 横浜市立大学, 医学部, 助教授 (10201617)
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Keywords | 肝臓 / 細胞増殖 / アポトーシス / Fas / Fas ligand / 視床下部 腹内側核 / 迷走神経 / 自律神経 |
Research Abstract |
以前我々は、肝臓を直接支配している迷走神経を切断すると肝再生自体は阻害されないが、その再生速度が遅延することを示した(Am.J.Physiol.1987;253G:439).さらに、これまでDNA量の定量、DNA合成の変化率の測定を行うことにより、交感神経の中枢である視床下部腹内側核を破壊すると、迷走神経の過興奮が起き、肝切除後の肝再生が促進されること(Pflugers.Archiv.1994;428:26)、直接的に障害を与えることがなくても肝臓で細胞増殖が起きることを示してきた(Neurosci.Lett.1991;126:127,Am.J.Physiol.1992;262:G483,Gastroenterology 1993;104:475,Life Sci.1995;57:827,Gastroenterology 1996;110:885).本科学研究費により、免疫染色学的手技により、視床下部腹内側核の破壊による迷走神経の過興奮が起こる1日目から7日目までかけて肝臓のacinar zone 1(門脈域)からacinar zone3(中心静脈領域)へ増殖帯が移行していくこと、および肝臓全体では3日目に細胞増殖のピークがあることを示した(J.Gastroenterol1998;33:523)。また、細胞増殖が起きているときには、増殖を制御するため、アポトーシスが起きていることが知られているため、視床下部腹内側核破壊による自律神経の過興奮がアポトーシスを起こすのかについて検討した. TUNEL法にてTUNEL陽性細胞を認め、電子顕微鏡にてcondensed nucleusを認め、アポトーシスが確認された.また、NorthernおよびWestern blottingそして特殊免疫染色法により、視床下部腹内側核破壊による迷走神経肝臓枝の過興奮により、肝でFasおよびFas ligandのmRNAおよびproteinの発現がみられ、FasおよびFas ligandによる肝障害が確認された(J.Clin.Invest.in revised version)。また、Fas遺伝子のdeath domainはFas/Fas ligandを介したアポトーシスに重要な役割を果たしている.我々は、視床下部破壊後12か月までこの部位に点突然変異が起こっていないかを検討したが、点突然変異は認められなかった。さらに,Caspase-3はアポトーシスに重要な因子であることが知られているが、この発現は認められた. 以上、本科学研究費により、交感神経の中枢である視床下部腹内側核の破壊による迷走神経の過興奮が、肝臓でFas/Fas ligandを介したアポトーシスを誘導することの証明ができた.
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