1997 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスベクターを用いたセルロプラスミン欠損症の治療に関する基礎研究
Project/Area Number |
09670686
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
武田 伸一 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子工学研究部, 室長 (90171644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山本 寛二 国立精神, 神経センター・神経研究所・遺伝子工学研究部, 流動研究員
宮越 友子 国立精神, 神経センター・神経研究所・遺伝子工学研究部, COE特別研究員
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Keywords | 原発性セルロプラスミン欠損症 / セルロプラスミン / 鉄沈着 / 活性化酸素 / 神経細胞死 / 遺伝子治療 / アデノウイルスベク- / ノックアウトマウス |
Research Abstract |
常染色体劣性の遺伝形式を示し、中年以降にWilson病に類似した不随意運動、肝硬変、糖尿病の症候を呈し、血清のセルロプラスミンの著減する原発性セルロプラスミン欠損症の家系について、我々はセルロプラスミン遺伝子の点突然変異により、スプライシングの異常を介してストップコドンを生じ、C端の欠失したセルロプラスミンが翻訳されるが、銅結合部位を欠くために速やかに肝臓内で崩壊することを明らかにした。本症では、セルロプラスミンのフェロオキシデ-スとしての活性が欠如するために、2価の鉄が3価に酸化されず、組織鉄としてのフェリチンの基底核、肝、膵を中心とした沈着が観察される。一方では、比較的大型の神経細胞の変性と脱落が認められるが、その背景として、鉄沈着による障害の他にセルロプラスミンが活性化酸素の除去機構に関与しているために、活性化酸素による組織障害として、神経細胞の細胞死を招いている可能性がある。そこで本研究では、セルロプラスミン欠損によるヘモジデロ-シスに対する遺伝子治療を将来の目標として、セルロプラスミン遺伝子をアデノウイルスベクターに組み込んで、非肝細胞系及び肝細胞系の培養細胞に感染させ、セルロプラスミンが蛋白として安定して発現するかどうかを検証することにした。最初に、既に発表されている塩基配列を下に、RT-PCR法を用いて、マウス・セルロプラスミンcDNAの全長(3.7kb)をクローニングした。次に、斉藤らにより確立され、我々の教室で用いているCOS-TPC法に基づいて、セルロプラスミンがCAGプロモーターの制御下に発現するように組み換えたアデノウイルスを得た。続いて、内在性のセルロプラスミンの発現が低い線維芽細胞株10T1/2、COS、及び筋芽細胞株C2に感染させ、予想されたサイズのセルロプラスミンが発現していることをWestern blotを用いて確認した。しかし、ラットの大脳皮質から確立したAstrocyteのprimary cultureでは、内因性のセルロプラスミンの発現が高く、外来性の発現との区別が難しかった。今後は、細胞培養系を用いて、外来性のセルロプラスミンが、どのような細胞内局在をとるのか明らかにする。また、我々が独自に作製を進めているセルロプラスミン・ノックアウトマウスに組換えアデノウイルスを導入して、セルプラスミンの発現がどのようにノックアウトマウスの表現型を改善するのか、詳細に検討する。
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[Publications] Nakamura A et al.: "Up-regulation of brain and Purkinje-cell---" Am J Human Genet. 60. 1555-1558 (1997)
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[Publications] Sakamoto K et al.: "Identification of a chick---" Biochem Byophys Res Commu. 234. 754-759 (1997)
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[Publications] Diagana TT et al.: "The transcriptional activity of a muscle-specific---" J Mol Biol. 265. 480-483 (1997)
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[Publications] Miyagoe Y et al.: "Laminin a2 chain-null mutant mice---" FEBS Letters. 415. 33-39 (1997)
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[Publications] Kameya S et al.: "Dp260 disrupted mice revealed---" Hum Mol Genet. 6. 2195-2203 (1997)
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[Publications] Yamamoto K et al.: "A pedigree analysis with minimizing ascertainment bias---" J Med Genet. 35. 23-30 (1998)
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[Publications] 武田,伸一(分担執筆): "キーワードを読む、脳・神経" 医学書院, 159(31-33) (1997)
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[Publications] 武田,伸一(分担執筆): "ノックアウトマウス・データブック" 中山書店, 564(283-284) (1997)