1999 Fiscal Year Annual Research Report
アデノウイルスベクターを用いたα-グルコシダーゼ欠損症の遺伝子治療の研究
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09670687
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Research Institution | National Institute of Neuroscience |
Principal Investigator |
辻野 精一 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第5部, 室長 (70280790)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 建機 国立精神・神経センター, 神経研究所・疾病研究第5部, 部長 (80005628)
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Keywords | α-グルコシダーゼ欠損症 / アデノウイルスベクター / α-グルコシダーゼノックアウトマウス / 遺伝子治療 |
Research Abstract |
α-glucosidase(acid maltase:AM)欠損症に対するアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入の特に全身的効果をAMノックアウト(KO)マウスを用いて検討した。 6週齢のAMKOマウスの心腔内にヒトAMを発現する組換えアデノウイルス(AxCANAM)を注射し1週間後、前脛骨筋、心筋、肝のAM活性、グリコーゲン含量を測定し、組織切片のPAS染色、acid phosphatase染色を行った。またこれら臓器と血清中のAM蛋白のWestern blot解析を行った。 AxCANAMを心腔内注射したAMKOマウスの各臓器では生理食塩水を注射したマウスの臓器に比べ、AM酵素活性は著明に増加し、グリコーゲンの蓄積は減少した。この効果は心筋で特に著しく、PAS染色、acid phosphatase染色による染色性も著明に低下した。またWestern blot解析では血清、肝、心筋、前脛骨筋にAM蛋白が検出された。 心腔内注射したAxCANAMは肝細胞によく導入されたが、筋での導入効率は低かった。しかし肝で発現したAMは主に前駆蛋白として分泌され血液を介し全身に及び、筋細胞などでuptakeされライソゾーム中で活性型AMにプロセスされるといった過程を経て全身に効果を及ぼしたと考えられた。一般に全身性筋疾患の遺伝子治療を考える際の大きな問題点はいかにして全身の筋組織に遺伝子を導入するかという点であるが、今回の結果は本疾患において必ずしも全身の筋組織に遺伝子を導入しなくても遺伝子治療の効果が期待できることを示すと考えられた。また本疾患では正常の20%程度の酵素活性があれば症状が出現しないことが知られており、その程度の酵素を全身の筋に供給することによってすでに出現している症状も回復するかもしれない。以上の理由から本疾患では遺伝子治療の実用の可能性が比較的高いと思う。ただ、今回使用した第1世代アデノウイルスベクターでは長期の遺伝子発現は難しく、新世代アデノウイルスベクターやアデノ随伴ウイルスベクターを用いた試みが必要であろう。
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Research Products
(1 results)