Research Abstract |
高頻度右室ペーシングにより作成した犬の心不全モデルを用いて,心不全の血行動態と細胞内Ca動態(心筋筋小胞体のCa2+放出,取り込み能)を詳細に検討してきた。まず,正常心筋より精製した心筋筋小胞体(SR)を用いて,ストップドフロー蛍光装置により急速なCa2+放出動態が高精度に測定しうることを示した(Yano et al,J Cardiovasc Pharmacol,1998,inpress)。次に高頻度右室ペーシングにより作成した犬の心不全モデルにおいては、Ca2+放出チャンネル(リアノジン受容体)数の減少に加えて不全心筋SRからの急速なCa放出の速度が正常犬に比し著明に低下していたが一方,Ca放出トリガーに対してよりsensitiveになっており(低刺激で容易にCa放出が生じる),細胞内Caoverloadをきたしやすい状態であることを示した(第47回米国心臓病会議(ACC),1998).また,同犬心不全モデルにける各種心不全治療薬の効果として,ミルリノン(フォスフォジエステラーゼ(PDE)阻害薬)とドブタミンでは左室弛緩能、筋小胞体Ca-ATPase活性に対する効果に差異があり,ミルリノンはSR膜結合型のPDEを直接阻害し筋小胞体Ca-ATPase活性を高め,ドブタミンに比し著明に左室弛緩能を改善しることを認めた(第47回米国心臓病会議(ACC),1998)。犬以外の心不全モデルにも検討を加えており,心筋症ハムスター心不全モデルでは,SRのCa放出チャンネル(リアノジン受容体)数が心収縮能低下に先行して減少しており(Ueyama T,Ohkusa T,Yano M et al,Am J Physiol,1998,in press)Growth hormon慢性投与によりリアノジン受容体数の増加が心機能改善と並行して認められた(Ueyama T,Ohkusa T,Yano M et al,Cardiovasc Res,1998,in press)。ヒト不全心筋においても、SRのCa-ATPaseおよびリアノジン受容体のmRNAレベルと左室収縮能のあいだにの間に有意な相関関係を認めた(Ohkusa et al,Heart&Vessel,1997).以上より心不全時にSR機能が心機能の重要な規定因子であることが示唆され,SR機能を高めることにより心収縮能,拡張能を改善させうる可能性が示された.
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