1998 Fiscal Year Annual Research Report
新しい血管拡張性ペプチド,アドレノメデュリンの,肺高血圧の進行に対する抑制効果
Project/Area Number |
09670803
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
吉林 宗夫 京都大学, 医学研究科, 助手 (80273449)
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Keywords | 肺高血圧 / アドレノメデュリン / モノクロタリン |
Research Abstract |
【研究1】 4週齢の雄ウィスターラット(n=15)にモノクロタリン60mg/kg[n=10]と生理食塩水[n=6;対照群]を1回皮下注した。モノクロタリンの皮下注を行ったラットの半数にはアドレノメデュリン5μgの生食溶解液を[n=5;PH-AM群]、残り半数のラットには生理食塩水を[n=5;PH-生食群]、いずれもモノクロタリン皮下注直後から毎日1回ずつ計3週間皮下注した。対照群のラットには生理食塩水を、最初の皮下注直後から毎日1回ずつ計3週間皮下注した。PH-AM群、PH-生食群、対照群の各々について、最初の皮下注から3週間後に、ペントバルビタールによる麻酔下に内頚静脈をカットダウンしてカテーテルを挿入し右室収縮期圧を測定した。右室圧測定直後に採血し、血液をアプロチニン・EDTA混合液を含むチューブに入れ冷却遠沈器で遠沈・血漿分離し-80度Cで保存した。その後ラットを麻酔死させて心肺を摘出し、摘出心臓から右室重量を測定して右室重量/体重比を算出した。右室収縮期圧、右室重量/体重比を、肺高血圧の指標とした。摘出肺はホルマリン固定ののち切片のHE染色を行い、肺小動脈の中膜厚と外径を計測して肺小動脈中膜厚/外径比を算出し、肺血管病変の指標とした。保存した血漿中のアドレノメデュリン濃度をRIAを用いて測定した。これらの結果、PH-生食群では、対照群と比較して右室収縮期圧、右室重量/体重比、肺小動脈中膜厚/外径比がいずれも有意に高値であり、PH-AM群ではこれらの値がPH-生食群と比較して有意に低値であった。血中アドレノメデュリン濃度は、PH-生食群が対照群と比較して有意に高く、PH-AM群ではさらに高値であった。以上の結果から、アドレノメデュリンの投与はモノクロタリンによるラット肺高血圧の進行を抑制することが示された。 【研究2】 小児期心疾患患者において血中アドレノメデュリン濃度をRIAを用いて測定し、その病態生埋的意義を検討した。肺高血圧を伴う左右短絡の先天性心疾患では正常の約1.6倍、チアノーゼ性先天性心疾患では正常の約3.2倍と著明な高値を示し、これら心疾患における内因性アドレノメデュリンの関与が示唆された。
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