1997 Fiscal Year Annual Research Report
胎生期ストレス負荷を用いたうつ病態動物モデルにおける脳の可塑性の決定因子の同
Project/Area Number |
09670975
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
三國 雅彦 群馬大学, 医学部, 助教授 (00125353)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井田 逸朗 群馬大学, 医学部, 助手 (50251103)
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Keywords | 胎生期ストレス / うつ病態動物モデル / 可塑性 |
Research Abstract |
胎生期のストレス性刺激は発達期の脳の神経回路網に可塑的変化を生じ、成熟後のストレス負荷に対する反応性を規定する要因の一つである。その決定因子を同定するために、以下のような検討を進めている。 胎生期ストレスによる神経系の可塑的変化を引き起こす機序の一つとして副腎皮質ホルモンが当然考えられるので、胎生17から19日の妊娠母体に50μg/kgのデキサメサゾンを投与したところ、その母胎から出生した仔ラットは生下時低体重であるが、生後3週齢で体重差がなくなり、成熟後の脳内のセロトニン代謝の低下が胎生期ストレス負荷と同様に観察され、しかも、成熟後の仔ラットに新奇環境ストレスを負荷すると、副腎皮質ホルモンの過大分泌反応を示し、行動学的にも多動が認められ、胎生期ストレス負荷で観察された内分泌異常や行動異常に類似した変化が認められた。したがって、神経系の可塑的変化を引き起こす胎生期ストレス負荷の効果を伝達する機序の一つがグルココルチコイド刺激であることが明らかとなり、Am J Physiologyに報告した。 次に、成熟後のストレスに曝された際の最初期遺伝子産物であるc-fosの分布や発現量に差異が生じるか否かを免疫組織化学的に明らかにするため、ウイスター系ラットの妊娠母体に生理的食塩水注射という軽微なストレスを妊娠14日から20日まで一日一回反復負荷し、仔ラットが成熟後に2時間の拘束ストレスを負荷し、直ちに脳を取り出し,インサイチュー・ハイブリダイゼーション法により視床下部室傍核、青斑核のc-fos遺伝子発現を対照群と比較したが、有意な差は見いだされなかった。引き続き、CRHなどタンパク質発現における差異の有無の検討を行っている。また、ディファレンシャル・ディスプレイ法による特異的遺伝子発現に関しても現在検討中である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Tokunaga M, Ida I, Higuchi T, Mikuni M: "Prenatal dexamethasone exposure alters brain monoamine metabolism and adrenocortical response in rat offspring." Am.J.Physiology. 273. R1669-R1675 (1997)
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[Publications] Muneoke K, Mikuni M, Ogawa T, Kitera K, Kamei K, et al: "Alterations of benzodiazepine rcceptor binding potential in anxiety and somatoform disorders." Radiation Medicine. 15. 163-169 (1997)
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[Publications] 中村彰治, 渡辺義文 三国雅彦: "うつ病の病態をめぐって" 生体の科学. 48. 58-61 (1997)
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[Publications] 三国 雅彦: "発達期のストレスと神経系の可塑性並びに感情障害脆弱性" 医事新報. 3815. 105 (1997)
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[Publications] 三国 雅彦: "胎生期や新生児期のストレスはラットのその後のストレス反応性を規定する要因のひとつである。" ストレス科学. 11. 272-278 (1997)
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[Publications] 三国 雅彦: "神経発達学的視点からみた精神疾患と脳科学" 脳と精神の医学. 8. 365-374 (1997)
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[Publications] 三国 雅彦: "「感情障害の受容体-細胞内情報伝達系機能障害」脳シグナルカスゲ-ドと神経疾患" 三国雅彦、樋口輝彦編、学会出版センター、東京、, 161-180 (1997)
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[Publications] 三国 雅彦: "「胎生期ストレスによる神経の発達に伴う可塑的変化と感情障害病態モデル」感情機能と神経・免疫・内分泌-脳の世紀に向けて" 山脇成人編、親興医学出版社、東京、, 55-67 (1997)